3割を占めるテイクアウトの販売
さて、ハイディ日高の「とんかつ日高」、トリドールの「豚屋とん一」、テンコーポレーションの「とんかつおりべ」は、いずれもそれぞれ、「日高屋」、「丸亀製麺」、「てんや」という有名チェーンの多角化として登場している。
価格的には、本格とんかつチェーンの「さぼてん」や「和幸」と、オートフライヤーを活用するなど合理化を徹底したファーストフード型の「かつや」や「松のや」の中間的なゾーンで、「とんかつ日高」は「麦そだち四元豚」、「とんかつおりべ」は「チルドポーク うらら三元豚」と「国産赤城山麓豚」という素材、「豚屋とん一」は店内で切り立てを提供する鮮度の違いで、付加価値を追求している。
「かつや」の最も安価なかつ丼(梅)は490円(税込529円)だが、同チェーンでは会計時にもれなく翌月末まで使える100円引のクーポンが配布されるので、リピート率が高い。実質、かつ丼はワンコインでお釣りが来る。とん汁(小)120円を付けても、500円を少し超える程度だ。ロースかつ定食の690円も、リピーターにとっては同様に実質100円引である。
一方、「松のや」のロースかつ定食は491円(税込530円)、ロースかつ丼510円は、味噌汁も付いており、味噌汁が好きな人にとっては安いと感じるだろう。
通常のロースかつでは、「かつや」は120gに対して「松のや」は90gであり、どちらが安いかは微妙なところである。「松のや」には5時~11時のモーニングメニューで、371円(税込400円)の「朝得ロースかつ定食70g」を提供しており、これは文句なしに安い。実際に、朝からしっかり食べたい人で、「松のや」の朝の集客は上がってきている。
低価格とんかつが浸透してきた背景には、テイクアウトの販売が好調で3割ほどを占める点も見逃せない。女性の社会進出が加速化していることがあり、手間のかかる揚げ物はテイクアウトで済ませる傾向が強まっている。これらの外食チェーンでは、揚げ置きをせず出来立てを提供するので、スーパーのつくり置き商品よりも、揚げ立てに近い状態で食卓に並べられるから、喜ばれている。
中食としての魅力もある低価格とんかつであるが、「かつや」と「松のや」を合わせてもまだ600店に満たない。大手3社で寡占化された牛丼は4,000店もあるのだ。まだ、店舗空白地帯が多く残されており、競争が激化するのはまだ先という感覚があるので、外食各社の新規参入が相次いでいるのではないだろうか。
Photo by: 長浜淳之介(とんかつおりべを除く)