音読の効果が出るのは「7回目」から
齋藤 「私の経験からしても、やはり音読はいいですね。以前子供たちを200人くらい集めて音読する、といったことをよくやっていましたが、先生が先導する復唱方式でやった場合、『坊っちゃん』は一冊通しで6時間くらいで音読できます。この時、大切なのは先生のリズムに合わせることで、意味の纏まりごとにイントネーションをつけながら読むと、意味がよく伝わるんです。
学力はバラバラでも、音読ができると子供たちは誰でも自信を持つようになります。優れた教育法として、音読がなぜ江戸時代から伝わってきのか。そのことの意味を改めて考えさせられますね。
例えば、宮澤賢治の『永訣の朝』にしても、音読をして解説をして、また音読をして解説をする。そうやって7、8回音読を繰り返すと、子供たちは次第に暗誦できるようになります。
最終的に大事なのは自然に暗誦してしまうまで導いてあげることで、無理矢理知識を詰め込む教育法とは違って、最も弊害が少なくていいのではないかと考えています」
陰山 「いや、いま齋藤先生は7回、8回とおっしゃったじゃないですか。さすがに現場を踏んでいらっしゃるなととても感心しました。僕の経験から考えても、力が出る反復回数はやはり7回からなんです。結果を出している教師は皆、口を揃えたかのように『7回』と言います。3回、4回、5回の反復ではまず結果が出せない」
齋藤 「1時間あれば、7回は反復できますよね。『平家物語』の「那須与一」でも「敦盛の最期」でもいいのですが、状況を説明した後に読んで、また読んでということを1時間繰り返すと、子供たちは次第にその日本語に慣れてきて『この言葉はかっこいい』などと感じるようになります。
音読の後で『現代語訳と原文と、どちらが日本語としていいか、好きなほうに手を挙げて』と聞くと、100%原文なんです。それが日本語の格の違いということなのかもしれませんね。徹底練習は7回、8回とやり続けた時に、ようやく染み込んでくるわけですが、反対に『確信を持ってそこまでやらなくては身につかない』という言い方もできるでしょう」
陰山 「反復は中途半端にやるから嫌われるんですよ。反復のよさを体感する前に、子供たちから『まだやるの?』と言われて教師はそこでやめてしまう。反復学習に悪いイメージがついてしまう。しかし、成果が出るのは、ただの反復ではなく徹底反復、具体的には7回以上繰り返した後なんです」