精神疾患者たちの「ココロの詩」が教えてくれる「詩作」の可能性

 

そこであらためて、「詩を書く」という作業に希望を見出している。この企画の当初、いくつかの福祉施設から精神疾患者や知的障がい・学習障がいの方への「詩の書き方」のレクチャーをお願いされ、私が話したのは「思いを書いて、願いを繰り返す」ことから始めるというシンプルなやりかただった。
今、この瞬間感じたこと、思ったことをそのまま文字にしてみる、その結果、なりたい自分やこうあってほしい現実を文字に「描き、繰り返す」との説明である。

朝起きて感じたことをつらつらと連ねて、昼間になって今の願いとして「ごはん食べたい」「ごはん食べたい」「ごはん食べたい」と綴るだけでも、素晴らしい作品になるから面白い。一歩踏み込めば「カレーが食べたい」も出てくるから、そうなれば味わいのある作品に仕上がってくる。
言葉を素直に描けることは、場の安心感が必然だから、自由に表現できることはすなわちストレスがないこと、その福祉施設の雰囲気も重要だ。だから、この作業には、さまざまな疾患や生きづらさを抱えながらも、発言や表現が自由であることが、よい作品を生み出す前提としてある。

1950年~60年代に米国で活躍した大詩人たちはニューヨーク派、ブラック・マウンテン派、ビート・ジェネレーションと呼ばれ、新しい言葉のリズムとその可能性を提示したが、それも言葉を自由に操ってよい環境があってこそで、半世紀を経た日本で感じるのは、精神疾患をはじめとする人たちの生きづらさの視点からの新しい言葉の連なりは、本来持つべき詩としての機能の中でまだまだ発揮できるものだと信じている。
それには「自由に思いを綴れる環境」が必要だ。この場を社会にどのように作っていくのか、これは社会の課題である。

image by: lzf, shutterstock.com

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