その一方で、職場でのハイヒール・パンプス強制問題について根本匠厚生労働相が国会で行なった答弁も炎上していますが、こちらはどう考えたらいいでしょうか?報道によれば、大臣の答弁は以下のようなものであったようです。
ハイヒールやパンプスの着用については、それぞれの業務の中でそれぞれの対応がなされていると思いますが、たとえば労働安全衛生の観点からは腰痛や転倒事故につながらないよう、服装や靴に配慮することは重要であって、各事業場の実情や作業に応じた対応が講じられるべきと考えております。それぞれの職場がどういう状況にあるのかということで、一般的にはそれぞれの職場での判断だろうと思います。
ハイヒールやパンプスの着用を強制する、指示する、これはいろんなケースがあると思いますが、社会通念に照らして、業務上必要かどうかということ、これは社会慣習に関わるものではないかなと思います。だからそういう動向は注視しながら、働きやすい職場づくりを推進していきたいと思います。
これは「言葉尻を捉えて炎上する」のを避けるために、巧妙に練られた答弁で、恐らくは厚労省官僚が夜ナベして書いたものだと思いますが、残念ながら全くダメです。
具体的には2つの問題があります。1つは「労働安全衛生の観点から」とカッコいいことを言っておきながら、「腰痛や転倒事故につながらないよう」「服装や靴に配慮することは重要」という巧妙な言い訳をしている点です。現在問題になっているのは、腰痛や転倒ではなく、ハイヒール特有の足の痛みという健康被害なのですが、「それを分かった上で無視している」のです。
2つ目は「社会通念、社会慣習」という言葉です。これはものすごく挑戦的で悪質な内容です。「#kutoo」つまり、ハイヒールという「靴が苦痛だ」という運動が起きていることを知っているくせに、そして健康被害があることも知っているくせに、「古い世代」の、具体的には「高齢者男性の思い込み」や「自分は我慢したので甘えるな」的な「高齢者女性による虐待連鎖」を半分肯定する側に立って逃げているからです。
報道の様子を見ていると、「強制を事実上容認した」とか、「強制がパワハラに当たり得る」というように、抽象的でボンヤリした批判が多いのですが、そうではありません。健康被害をゴマかした上で、無反省な高齢世代の世論に媚びているという深刻な問題を抱えているのです。
だから炎上しているということを、大臣と厚労官僚は猛省しなくてはなりません。とにかく、カネカ、阪急(パラドックス)、そして厚労相と、広報のスキルが低すぎると思います。恐らく、この三者ともに「どうして炎上したのか」をよく分かっていないだろうし、多少分かっていても「アンチ・ビジネスとか、批判のための批判をする野党根性」だという風に、軽く見ているのではないかと思うのです。
そんなことでは、それぞれの組織はどんどん困難に直面していくだけと思います。もっともっと、パブリックなメッセージ発信については、具体的に、誠実に準備して、こうしたトラブルを起こさないようにしていただきたいと思うのです。
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