ケータイ「解除料1000円」をゴリ押し。総務省が挙げた呆れた論拠

 

有識者会議で議論のなかった「長期利用割引」にもメス━━3年前の「長期利用者を優遇せよ」から一転

6月18日の総務省からの案では、長期利用割引に対しても制限が入った。「許容される利益の提供の範囲は1ヶ月分の料金程度」としたのだ。

しかし、この有識者会議では、長期利用割引に対する議論はほとんどされていない。そのため有識者からは「研究会で、ほとんど議論されていない長期利用割引の規制に踏み込むのは拙速ではないか」「長期利用割引を『期間拘束』の一部として制限することは果たして妥当なのか」「MNOを15年以上使っているユーザーに対して、1ヶ月分しか割引が適用されないという制限があるのはどうか。もうちょっと額が大きくあってもいいのではないか」という声が相次いだ。

今回、総務省では「長期利用割引は競争を阻害する」として、メスを入れてきた。しかし、そんなこと何年も前からわかっていたことではないか。

3年前の有識者会議では「長期利用者の優遇しろ」という声があがった。ただ、その時にコラムなどで「競争促進と長期利用者優遇は矛盾する」と指摘したのだが、総務省は長期利用者の優遇をキャリアに要請した。結果、各社は長期利用者の割引やポイント付与を強化したのだった。

しかし、たった3年で、今度は全く逆のことを言い始める総務省。彼らは、自分たちの矛盾に気がつかないのだろうか。

毎度毎度思うが、キャリアの「わかりにくり料金体系」の元凶はすべて総務省の行き当たりばったりの方針にあるのではないか。総務省がしっかりと将来を見据え、競争政策を展開したいのであれば、もっとスマートなやり方があったはずだ。

小手先の制度設備しかできないから、結果として、現場が混乱するだけで、そのしわ寄せはショップとユーザーに降りかかるのだ。

今回、長期利用割引で「1年で1ヶ月分の割引」となると、かつてソフトバンクがやっていたような「11ヶ月使えば1ヶ月は通信料金は無料」みたいなプランが出てくるのではないか。そうすれば、1年間、契約し続けようと思うし、1年経過してもまた1年使い続けたくなる。

結果として、ユーザーを囲い込めるような気がしている。結局、メスを入れても、キャリアに有利な「長期契約拘束」になるのではないだろうか。

image by: Osugi / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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