メールやLINEなどのメッセージツールで送られてきた、異性からのハートマーク。みなさんはそこに、どんな意味を見出すでしょうか。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、ハートマーク入りのメッセージを「勘違い」しわいせつ行為に及び懲戒処分を受けたある学校長が、それを不服として起こした裁判の結果を紹介しています。
ハートマークの絵文字は「好き」の証拠になるのか
みなさんは、異性の相手からLINEでハートマークのスタンプをもらったらどう思いますか?状況にもよると思いますが、少なくとも、悪い気はしないのではないでしょうか。それどころか、「あれ?もしかしたら…」と、思ってしまう人もいるかも知れません(もちろん状況にもよると思いますが)。
これは実際に周りの女性にも聞いてみたことがあるのですが、「いいと思ってない人には(ハートマークは)送らない」という人もいました。ただ、これはもちろん「も」いただけであって、「全然気にしなーいノリで送っちゃうー」という人も当然ながらいました。
これは非常に難しい問題ですね。もしこちらも全く気にしていない相手であれば、どちらでも問題ないのですが、もし気になっている相手からのLINEやメールだったら…。
では、これは法律的にはどう判断されるのでしょうか。それについて裁判があります。
ある学校の校長先生が部下の女性の先生にセクハラをしたとして懲戒免職処分になりました。この校長先生は自分の車の中で同意なくこの先生に抱きついたり、複数回キスをしたりと性的な行為をしたということで懲戒処分をうけ退職金も全額不支給になってしまったのです。そこで、その校長先生が「納得いかない!」として裁判をおこしました。
では、その裁判はどうなったか。
ここで問題になったのが、「同意があったか」でした。校長先生は「同意があった」と主張しました。その根拠が「車での行為の最中に拒まれなかった」こと、そしてもう一つが「ドライブに誘ったメールの返信にハートマークの絵文字が入っていた」こと、でした。
さて、みなさんでしたらどう考えるでしょうか。ハートマークの絵文字は「好き」の証拠になるのか?
裁判の結果、この校長先生の行為は「セクハラである」と認められました。その理由は次の通りです。
- 校長先生、女性の先生ともに既婚者であり、車に同乗したとしても行為を黙示的に許容していたとは考えづらい
- 上司としての影響力を使ってわいせつ行為を強制した
そして、ハートマークの絵文字については
- 単なる感情表現の1つとして用いることは通常ありうる。恋愛感情を抱いていたということはできない
としたのです。いかがでしょうか。
最近はセクハラが大きな話題になり「これじゃ、気軽に飲みにも誘えないよ」という話もたまに聞きます。ただ、すべてのセクハラ事件に共通することですが、「飲みに誘った」だけで問題になったことは一度もありません。もう少し言うと「飲みに行った」だけで問題になったことも全くありません。
「行ったとき」もしくは「行った後」に行なった「行為」が問題になっているのです。
大きなプロジェクトが無事に終わったときや部下をねぎらいたいときなどに飲みに誘うことは何の問題もありません。むしろ積極的に誘っても良いでしょう。
ただ、そのときに上司と部下の関係だったり、発注元と発注先の関係だったりすると相手が断りづらい状況というのがあります。ときには相手の機嫌を損なわないように(恋愛感情などは全くなくても)積極的に誘いにのってくることもあるでしょう。
「相手がどう思っているのか」
その判断が大切なのです。
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