大炎上のセブンペイ問題でわかった、日本企業の「深刻なリスク」

 

この問題の背景には、「スキルのない人間がトップに立ってしまうという日本の組織の特質があるように思います。どうしてなのでしょうか?

まず「過去の実績」で昇格して最後は役員やトップになってしまうという、間違った人事があります。過去の実績はあくまで過去のものであり、現在、つまり21世紀の2019年という時点で進行している問題について、適切な判断を下せるとは限らないのです。にも関わらず「過去に成功した」ことだけを根拠にその人に権力を与えるというのは、その人事自体がリスクだと考えなくてはなりません。

もう1つは、年功です。長く勤務していたとか、歳が上だというだけで、その人に権力を与えるのが日本式です。これも、全く同じで「人事それ自体がリスク」以外の何物でもありません。

さらに言えば「調整力」です。取引先との調整ができる、監督官庁との調整ができる、あるいは金融機関との調整ができる、そのことを期待されて役員になったり、経営者にしたりという人事があります。ですが、そのような「調整が通用するのは国内だけです。海外から猛烈な勢いで変化の波が押し寄せる、また海外から押し寄せるインバウンドの顧客が重要な収入源になるというのが現代です。

現代のビジネス環境では、事実を直視して、変化の方向性を見極める能力が必要なのに、調整型の人材が大手を振って「のさばっている」のであれば、それはどんどん見直さなくてはなりません

それにしても、「一部のOSではなんと会員登録時に生年月日を登録なしにでき、その場合は「2019/1/1」が自動入力がされる」という仕様については、驚愕するしかありません。これでは、ドロボーに合鍵を配りながら金庫を売っているようなものだからです。こうなると、ベンダーのどこかが裏切っているとか、意図的に手を抜いた可能性もあるように思います。

仮にそうだとしても、マネジメントが見抜いてストップをかけるべきであり、そのスキルがなかったのですから、何を言われても弁解の余地はありません。

こんなことが繰り返されるようだと、フィンテックの分野では日本人も「中国系のサービスの方が信用できる」ということになり、気がついたら何もかもを海外勢に取られていたということにもなりかねません。

とにかくスキルのない人材に権限が行ってしまうというのは、日本の企業が持っている「制度的なリスク」としか言いようがありません。

以前にコンピュータを使ったことのない人物がサイバーセキュリティ担当大臣になって世界から失笑を買ったことがありました。ですが、恐らく国際的な犯罪集団は、そのエピソードをしっかりと見ながら「虎視眈々とチャンスをうかがっていた」のだと思います。「日本の場合は、スキルのない人間がトップに立つカルチャーがある、ならば、そこが狙い目だ」と。

こうなったら、一定以上のスキルのない人材は、どんなに学歴や職歴があっても、公職追放するとか、強制学習施設に放り込むとかして、若くて能力のある人材にどんどん権限を与えていくようにしないと、日本経済全体が沈没してしまうと思います。

image by: セブンペイ公式HP

冷泉彰彦この著者の記事一覧

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 冷泉彰彦のプリンストン通信 』

【著者】 冷泉彰彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 第1~第4火曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 大炎上のセブンペイ問題でわかった、日本企業の「深刻なリスク」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け