藤木氏が「顔に泥を塗られた」と言うのは、藤木氏の意向や動きを知りながら、林市長が8月22日、IRを誘致すると発表したからだが、藤木氏は「ハードパワー」という言葉で、その背後の大きな力を表現した。
この重要な発言に関し、記者会見場で一人のフリージャーナリストが具体名を出して質問したときのやりとりに、藤木氏の本音がうかがえる。
――林市長が舵を切った背景にハードパワーがあるというのは、地元選出で陰の横浜市長といわれている菅官房長官がからんでいるとしか考えられないと聞こえたんですが。
藤木会長 「それはあんたの自由。菅さんとはとっても親しいですよ。彼も俺を大事にしてくれるし。ただ今立場がね、安倍さんの腰ぎんちゃくでしょ。安倍さんはトランプさんの腰ぎんちゃくでしょ…安倍も菅もトランプさんの鼻息を窺ったりね。さびしいけど現実はそうでしょ」
藤木氏は菅官房長官の関与を否定しなかった。しかも、トランプ米大統領の言いなりになっている安倍首相と菅官房長官を「腰ぎんちゃく」と呼んではばからない。
横浜への進出を狙うラスベガス・サンズ社が当て込んでいるのは外国人観光客ではなく、日本人富裕層である。一般国民からみれば、日本人の富をカジノの胴元に移転させる装置をつくるだけのこと。サンズ社が出てきても、儲けが出なくなったら、さっさと撤退するだろう。そもそもカジノはもはや過当競争で、韓国の「江原(カンウォン)ランドなど失敗例が増えているのだ。
横浜商工会議所の上野孝会頭が今回の林市長の決定に歓迎のコメントを発表しているところをみると、地元経済界は概ね、カジノ導入に期待しているようである。しかし、対する89歳の論客は手ごわい。市民の反対運動もある。「ハードパワー」に、そうやすやすとねじ伏せられはしないだろう。
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