さて次に、「〇〇口調」の〇〇に当てはまる、重要ジャンルのひとつは、具体的な職業や、人名だと思います。
例えば、「デパートのアナウンス口調」であれば、
- 声は高くて細め
- 発音は機械的ではっきり
- 母音を伸ばして館内に響かせる
- 抑揚を大きく
- 語尾を上げるイントネーション
- 甘い、優しい
- です、ます、ございます、申し上げます、ませ~
- 最後の音を半音上げる…
などの特徴がありますよね。
それに対して、「野球場の場内アナウンス口調」は、デパートに似ていますが、
- 声が中音域で太め
- 発音がキリっと歯切れが良い
のがスポーツらしいところ。
デパートも野球場も、広いスペースに響かせるアナウンスメントであるという性質上、母音や語尾が響き渡る時間は、次の言葉を被せられないため、必然的にああいう口調になるのだと思います。
また、話し方に特徴が出やすい職業、「男性ソムリエ口調」では、
- 声は中~低で太め
- 強弱のメリハリ
- 高低のメリハリ
- 声帯にピンポイントに当て過ぎない、柔らかい丸い声
- 専門用語
- 国際性を感じさせる口ぶり
- です、ます、ございます
- うやうやしさ
- ディテールの表現
- 自信、朗々とした話しぶり
- 豊かな表情を伴う…
なんとなく、このような共通のイメージがありますよね。
ソムリエさんが、だいたいこのような話し方になるのも、理由があって、まず、比較的至近距離で主に少人数に対する接客をすること、その客層が客単価の高い富裕層中心であること、ワインという西洋文化に通じていること、そしてその知識の披露も味の内であること、自分が管理しているワインをオススメするという、プレゼンに慣れていること、見せることを意識していること、論理的でありながら、味覚などの情感も豊かに言語化すること…など。
こういう共通の環境があるからこそ、口調も似通ってくるわけですね。そして、専門用語など、使う言葉の傾向も、口調を構成する大きな要素になっていることがわかります。
さらに、〇〇口調の〇〇に、個人名が入れば、それこそ、人の数だけ口調がある、ということになります。例えば、「誰々先生の口調」。小学生の頃は、真似のうまい子がいましたよね。「誰々部長の口調」。同僚の仲間内で再現されることがありますが、本人に聞かれたら、大変ですね。
そして、芸能人の誰々みたいな口調。「志村けんのバカ殿様の口調」であれば、声は甲高く張って、口の形を、半開きで歪めがちにしつつ、舌がべろんと見えるぐらい出しながら、わざと滑舌を甘くして曖昧に発音、なおかつイントネーションを訛りっぽくすることで、いかにも、おつむの弱い子供がそのまま大人になってしまったような役作りをしているわけですね。
もちろん、使う言葉、言い回しも、その役にふさわしいものが確立し、それらトータルで、バカ殿様というキャラクターの口調となっていたわけです。そして、その口調の特徴が際立っていたため、子供たちが真似をする、ということですね。