サウジの石油施設への無人機攻撃を読み解く。得をするのは誰か?

 

一つの可能性は、あくまでも完全なる推測ですが、イスラエルです。今回、公開されている衛星写真や動画などから判断すると、イスラエルによる直接的な攻撃はなかったと考えられますが、もし世界最高と言われる軍事技術を“実行犯”に提供して、今回の攻撃の背後で糸を引いているとしたら。(今回の攻撃の精度と、あまりにもピンポイントでロスなく攻撃している点から、とても“イスラエルっぽい”雰囲気が漂っています。)

では、なぜイスラエルの可能性を感じるのか。それは、今回のメルマガの冒頭でも挙げましたが、ちょうど17日に総選挙が実施されましたが、イラン主導と考えられる攻撃を演出することで、選挙で劣勢に立たされているネタニヤフ首相にとっては、「イランは油断ならないから、イスラエルからの強い対応は必須だろう。そして、それができるのはリクードだけ」というロジックを訴えかけて、選挙戦終盤での勢力の盛り返しを画策したという穿った見方も可能かと思います。

実際の獲得議席数を見た際に、その狙いはあまり大きくは叶えられなかったように思いますが、諸々の情報と状況を見た際に、一見、陰謀論に与しているかに思われる説も、ありうるような気がします。ただこの説では、『じゃあ、いったい“だれ”をエージェントとして使ったのか』という大事なポイントは明らかにはなりません。

さらに、穿った考え方をすれば、もしかしたらサウジアラビアの自作自演ということも考えられます。普通ならば、自国経済の核である原油施設を半分近く失うような攻撃を自ら演出するとは到底考えられませんが、様々な情報を分析してみると、可能性はゼロではなかったといえます。

例えば、今回の実行犯を“イラン”と勝手に確定することで、イランへの対抗策として、ビンサルマン皇太子が何度か口にしている『サウジアラビア独自の核開発』を後押しする狙いが考えられます。

「イランは核開発を進めている上に、アメリカなどが開発してきた無人攻撃機をレーダー誘導で奪取し、今や実用化して実践配備しています。そして、フーシー派やシリア政府軍、他にイラン革命防衛隊がサポートする武装組織に配備されていると考えられます。ゆえに、その脅威に立ち向かうために、サウジアラビアは独自に対抗策の開発と配備を急ぐべき」と主張し、脱石油依存経済への転換を掲げるビンサルマン皇太子の政策の重点推進分野に位置づけるというシナリオです。

それに加えて、この“動き”は、防衛システムのアメリカへの過剰な依存からの脱却の理由付けに使えるでしょう。イランが行ってきたように、アメリカ製のものを応用して、自国での開発に傾倒する可能性を開くきっかけに用いるかもしれません。

そして大被害を被った原油施設とサウジアラビアの生産能力ですが、仮にアブドラアジズ大臣やアラムコの幹部が言うように「月内にはフルキャパシティーに戻すことができる」のであれば、今回の攻撃による“被害”も、あらかじめ計算し、周到に準備していたのかもしれません。そのキャパシティーと可能性については、私は懐疑的ですので、完全な推測ですが。

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