サウジの石油施設への無人機攻撃を読み解く。得をするのは誰か?

 

今回の件で、おそらくもっとも割を食ったのはアメリカでしょう。それは、今回、見事に脆弱性を露呈したサウジアラビアの防衛システムは、アメリカがサウジアラビアに買わせて配備した“最新鋭”のものだったからです。

これまでアメリカ政府は、アメリカ製の迎撃ミサイル(パトリオットミサイルなど)をはじめ、多くの武器を中東諸国に買わせてきました。サウジアラビアは言うまでもなく、その中でも最大の顧客で、そのアメリカ製の防衛システムが非常に重厚に導入されているサウジアラビアで、今回の攻撃に対して、それらのシステムが全く役に立たなかったことは、世界で武器輸出を進めるトランプ政権にとっては、顔に泥を塗られた形と言えるかと思います。

今回の事態で生じた諸問題に対するリスクマネジメントを誤ると、今後の武器ビジネスに大きな影響を与えるばかりか、ロシアサイド(イラン、トルコを含む)にアメリカ製の防衛システムの脆弱性を露呈したともいえるからです。

ゆえに、トランプ政権としては、何としても真犯人を探し出したいと考えており、一応、いつも通り“政治的な理由で”イランを犯人に仕立てようとしています。しかし、イランは最高指導者ハーマネイ師も、ロウハニ大統領も、そしてザリフ外相も、今回の一連の攻撃へのイランの関与は全面否定し、「イエメンをめちゃくちゃにしたサウジアラビアが報いを受けたのだ」と主張しています。

真犯人については、まだ明らかになっていませんし、もしかしたら今後も明らかにならないかもしれませんが、一つ言えることは、これで、確実に今月末に開催できるかもしれなかった米・イラン首脳会談(@国連)の可能性はほぼなくなったということでしょう。緊張緩和の絶好のチャンスだと考えられていたため、非常に残念な状況です。

しかし、ここで大きなクエスチョンマークが生じます。『なぜ、今だったのか?』と。誰が実行したのか・主導したのかは別として、『アメリカとイランの緊張が緩和されることを良しとしない勢力』が、トランプ・ロウハニ会談の芽を摘みたかったからと言えるかと思います。

両国間の緊張関係が緩和されることで、立場が脅かされる勢力(既得権益を失いかねない勢力)が、9月24日からの国連総会首脳会合の準備のための最終段階を狙い、緊張緩和の可能性を消し、逆に緊張を高めるための“攻撃”を演出したのでしょう。

そして、トランプ大統領が、イランとの対話のチャンネルを開くために、イエメン内戦の仲介を行おうとしている動きについては以前触れましたが、その当事者でもあるサウジアラビアを攻撃することで、イエメン内戦を収めるためのチャンスも吹っ飛ばしました。これは、6月の安倍総理のテヘラン訪問時に起こったタンカー襲撃事件の背後にあった理由にもつながるかもしれません。

では誰が行ったのでしょうか。完全な憶測になってしまうかもしれませんが、それは『今回の件で、得をするのは誰か』というポイントを見てみれば予測ができるかもしれません。

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