臨界事故から20年。原子力関係者の危機管理意識は向上したのか?

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9月30日は、日本で初めて死者が出てしまった茨城県東海村での臨界事故から20年の節目となる日でした。事故の前年に、茨城県内での原子力安全協定に関する会合で講演し、関係者が発した驚きの言葉がいまも耳に残ると語るのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんです。この20年の間にも数々の原子力に関わる事故は起こっており、「人間は学ばないものだ」ということを前提に、常に危機管理意識を確認、点検、向上させることの必要性を訴えています。

人間は学ばないものだ

9月27日、茨城県東海村の核燃料加工会社JCOの臨界事故から20年になるのを前に、東海村役場では黙祷が捧げられ、7日には原子力安全フォーラムが行われました。このニュースを眺めながら、JCO臨界事故とその前後の日本の原子力安全をめぐる状況に思いをいたさずにはいられませんでした。

1999年9月30日、茨城県東海村のJCO(住友金属鉱山の子会社)の核燃料加工施設内でウラン溶液が臨界状態に達して核分裂連鎖反応(臨界)事故が発生、作業員2人が死亡、1人が重症となり、住民ら667人が被曝するという、日本の原子力史上初めての重大事故が発生しました。

JCOは燃料加工の工程において、国の管理規定に沿った正規マニュアルではなく「裏マニュアル」を運用していました。原料であるウラン化合物の粉末を溶解する工程では正規マニュアルでは「溶解塔」という装置を使用するという手順でしたが、裏マニュアルではステンレス製バケツを使う手順に改変されており、当日は裏マニュアルで作業が行われていました。

事故の一報が入ったとき、思わず「やっちゃったよ」と呟いたのを憶えています。それというのも、事故の1年2ヵ月前に耳にした原子力関係者の驚くべき言葉が耳許に蘇ってきたからです。

1998年7月10日午後、私は茨城県水戸市の水戸プラザホテルで開催された「平成10年度・茨城県原子力安全協定推進協議会総会」で講演しました。そして、講演後の懇親会で「原子力事故が危機管理の対象とは、初めて知りました」という、それも原子力関係組織の幹部の言葉を耳にしたのです。講演の主催者の茨城県総務部長の務台俊介さん(現・自民党衆議院議員)も深刻な面持ちでした。

JCO臨界事故の時、務台さんはまだ総務部長の職にあり、橋本知事の智恵袋として事故対策の先頭に立つことになりましたが、電話で次のように述べていました。

「残念ながら事故は起きましたが、昨年夏、小川さんに来ていただいて危機管理について講演会をやっておいてよかったと思いました。少なくとも、私と県などの行政側の意識が変わり、それなりに備える方向に動いていましたから」

それから14年になろうかという2013年5月23日正午頃、今度は同じ東海村にある日本原子力研究開発機構の実験施設で事故が起きました。

加速器実験施設「J-PARC」内の原子核素粒子実験施設で発生、施設内にいた6人が内部被ばくし、さらに24人以上が被ばくした可能性があるとのことです。しかも、原子力規制庁への報告は事故から1日半経過していたというのですから、開いた口がふさがりません。J-PARC側の謝罪会見の様子を眺めながら、絶望感が先に立ちました。

やはり日本の原子力関係者の頭の中は、「原子力事故が危機管理の対象とは、初めて知りました」のレベルから抜け出していないのではないか、と思わずにはいられません。これは、原子力関係者だけの問題ではないのですが、人間は学ばないものだということを証明する出来事でした。

同じ過ちが繰り返されないためには、常に脚下照顧、形だけの危機管理に陥っていないかを確かめ続ける必要があります。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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