言われて気付いた速歩の「損」。速歩と情趣を両立させる新ルール

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不動産の物件情報で徒歩10分は800mと言われ、時速は4.8km。大人の女性なら少し速足に感じられるスピードかもしれません。しかし、メルマガ『8人ばなし』の著者の山崎勝義さんは普段、時速6kmから6.5kmで歩いているそうで、女性にはかなりのスピードに映るでしょう。それほどの速歩きが故に知人女性から「損してますね」と指摘されたことがあるそうで、その意見に納得した山崎さんは、歩く際に新しいルールを設定しました。いったいどんなルールなのでしょうか。

速く歩くこと

私は歩くのが速い。複数の人からそう言われるから、きっとそうなのだろう。試しにトレッドミルで計測してみたら大体時速6kmから6.5kmくらいのスピードであった。

基本的に東京の人は皆歩くのが速いから、この程度なら不自然ではない…たぶん。少なくとも歩く速さのせいで変な顔をされたり睨まれたりしたことはない。もっとも自分では確認のしようのない後方のことは何とも言えないが。

という訳で私はぐんぐんずいずいと歩く。ただ何事にも功罪はある。とにかく目的地には早く着く訳だから、まずもってこれが最大の功である。罪の方はと言うと、うっかり道でも間違えようものなら恐ろしく遠くまで行ってしまうこと、途中気になる店があっても立ち止まるには急制動を掛けねばならないから後ろ髪を引かれつつも見送るしかないこと、見知った人とすれ違ってもその人を同定する頃には遙か遠くまで進んでしまっていること、くらいである。…くらい?ざっと数えただけで結構ある。本当に損益的に問題がないと言えるのだろうか。

そう言えば以前、ある女性にこんなことを聞かれたことがある。
「歩いている時はどこらへんを見ているんですか?」
「大体7、8メートル先を上目使いで見ている」
直線的に進むにはこの距離で障害になり得るものを認知しておく必要がある。顎を上げていてはスピードが出ない。合理的な答えだ。

「今まで道に落ちている物を見つけたことは?」
「そう言えば歩いている最中にはないような気がする。そもそも下をあまり見ないし」
「雪の日でも?」
「いや、雪の日は見る。足下も見るし、雪でいつもと様子が違う石畳やレンガ、マンホールなど、もの珍しくて寧ろあちこち見ちゃう」
「そんなことが季節ごとに結構あるんですよ。損してますね」

そう言えばそうだ。雪も降る。桜も咲く。散りもする。雨も降る。紅葉もする。落葉もする。それらの事象を全て無視して求道者の如くただひたすらに歩くことに何らの得もあろう筈がない。速歩と情趣は共起しない

とは言え、長年慣れ親しんだスピードを捨てて遅く歩くのは、高速道路を一般道の速さで走っているようでどうも落ち着かない。だから一つだけルールを追加した。「時々立ち止まる」である。初めから止まるつもりでコース取りをして行けば後続者に迷惑が掛かることもない。そうして止まってから周囲を眺めるのである。

いろいろ気付く。先に挙げたようなことだけでなく、看板や建物も見れば結構面白いものがある。そのいちいちに意識を向ければ見慣れたものなどないと言えるほどである。こうやって今まで取りこぼしてきたものを回収しながら、ぐんぐんずいずいと歩くのである。

「肩のところに桜の花びらがついてますよ」
私の速歩を指摘してくれた女性が桜の頃に見つけてくれた。まだ紅葉落葉にはおよそ早いが、立ち止まって街路樹を見ながらその時のことをふと思い出したりした。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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