あらゆる場合を想定せよ。断水時にマンション設備の何が使えるのか

shutterstock_691148872
 

台風によるタワーマンションの断水報道をきっかけとして、自宅マンションの給水方式について再確認の必要性を感じられた方も多いのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、給水方式で異なる断水対処方法を紹介するとともに、注意すべき点についても記しています。

マンションの非常用給水栓には2種類がある

こんにちは!廣田信子です。

昨年(2018年)、関西地区を直撃した台風21号では停電が発生しマンションでも停電に伴う断水が多数発生しました。停電でポンプが動かないことによって受水槽から各住戸に水を送ることができないための断水です。

これを踏まえ、大阪市は、「受水槽方式」の建物において、停電時等に建物全体が断水とならないように、非常用給水栓の直圧部への設置を認めることとした…とニュースになりました。

同じく、昨年発生した北海道胆振東部地震ではブラックアウトによる停電が広範囲に及び、マンションも大きく影響を受けました。やはり、多くのマンションで、停電で水が出ない体験をしましたから、先日セミナーで伺った北海道でも、停電時の水の確保が話題になっていました。

今さらですが…マンションの給水方式には、「受水槽方式」「直結増圧方式」「直結直圧方式」があります。

受水槽方式」には、地下や1階にある受水槽からポンプで直接各戸に送る場合と、一旦、屋上の高置水槽まで水を上げて落下圧力で各戸に送る方式がありますが、どちらも停電でポンプ動かなくなったら水を送ることができなくなります

直結増圧方式」は、受水槽はありませんが、水道本管からの水の水圧を上げるためにポンプを使うので、やはり、停電の影響を受けます(3階ぐらいまでは、増圧がなくてもあがります)。

直結直圧方式」は、水道本管の圧力で、各住戸まで直接水を送る方式ですから、停電でも水が各住戸に届きます

大阪市が発表したのは、「受水槽方式」の建物において、本管から受水槽への配管の途中に、非常用給水栓を設置することを認めるというものです。改めて認めるといるということは、これまでは、制限があったということですね。水圧、衛生管理の問題や使用料金の徴収の問題があったのでしょう。

大坂市が提示した条件は下記です。

  • 非常用給水栓は、キー式水栓とし、常時使用は認めないものとする
  • 使用時においては、滞留水の排水を十分に行い使用すること。なお、通常の水道使用と同様に、料金が発生する
  • 非常用給水栓は給水装置の改造工事となるため、大阪市の指定を受けている大阪市指定給水装置工事事業者を通じて、「給水装置工事」の届出を水道局へ提出すること

では、これまでは、この非常用給水栓が設けられなかったかというとそうではなく、「受水槽方式」、「直結増圧方式」でも、1階に、受水槽やポンプに行く配管とは別に、直結で非常用水栓が設けられていて停電になってもそこだけは水が出るようになっているマンションもあります。普段は散水栓として使っているケースも。普段から、基本料金+使用料を払っているということです。

北海道では、停電になっても使える水栓がマンションにあることをマンション住民が知らずにそれを活かせなかったという話を聞きました。反省点ですね。

また、これと紛らわしいのですが、災害時に受水槽内の水道水を有効活用できるように、受水槽に非常用給水栓を設置するのを条件付きで認める自治体が出てきました。受水槽に直接水栓をつけて、そこから、受水槽内の水を取り出し飲料水等に使えるようにするものです。これは、実は、すでに実施しているマンションもあると思います。

私の浦安市でも、緊急遮断弁で災害時には受水槽内の水を各住戸に送るのをストップし、受水槽に取り付けた水栓から水を配給するという仕組みをつくっています。これも、正式には認められない等の話が出ていましたが、やっているマンションは多いと思います。

print
いま読まれてます

  • あらゆる場合を想定せよ。断水時にマンション設備の何が使えるのか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け