さらに、前述のとおりニューヨーク市を形成する5つの区を走り抜けるコースは、ニューヨーク市内の様々な街の雰囲気を楽しめるものになっている。
例えば、エリアごとに応援バンドのかける音楽の種類が違う。ブルックリンはガレージロック多め。学生の多いエリアは学校の吹奏楽団。ハーレムはゴスペル。なぜか日本人の太鼓応援もハーレム付近で力強い太鼓の音に励まされる。鼓舞される感覚をリアルで得られる瞬間だ。
とにかくいろんな顔のニューヨークを体感できるレースなのである。NYCマラソンはそのバラエティの豊富さから、『世界でもっともエンターテインメントの高いレース』と呼ぶ人が多い。
なお、NYCマラソンの経済効果はなんと、4億1千5百万ドル。日本円にしておよそ500億円と伝えられている。
(2)障がい者を支援するアキレス
世界中から多くの人たちがNYCマラソンに参加するが、当然、障がいを持った方々も数多く参加する。他のマラソン大会同様に専用の参加枠が設けられているのだけど、他の多くのマラソンとの最大の違いはNYCマラソンは時間制限がないということ。どんなに時間がかかっても、翌日の朝になっても走りきることができる。
そのため、障がいを持つ方だけでなく、お年寄りや重い病気を克服した人など、時間がかかるけどマラソンを完走したいという方が毎年何人もNYCマラソンに参加している。そう、遅いという理由だけで途中で棄権しなくてもいいのだ。だから毎年、感動のゴールシーンについては話題になっている。
さて、NYCマラソンに特定の障がいを持つ方が参加するためには、その障がいの内容次第で参加方法が変わるが、今回は、盲目の方や、様々な障がい(知的障がい、聴力の障がいなど)を持つ方々をサポートするNPO団体のアキレス・インターナショナル(Achilles International 以下アキレス)についてお話しよう。
アキレスは1983年にニューヨークで設立された団体。全米31の支部、世界42ヶ国に111の支部を持っている。特に本部があるニューヨークでの活動は非常に活発で、毎年1回はアキレスを支援するためのレースがセントラル・パークで開催される。
だから、ニューヨークでマラソンをしたことある人は一度はアキレスのロゴを見たことがあるという人は多い。ランナーの間では知名度が高い有名な団体なのである。
有名な理由はその活動内容だけでなく、アキレスの設立者がすごいからでもある。設立者はディック・トラウム(Dick Traum)さん。現在もアキレスの会長を務める。
ご参考:
● アキレス・インターナショナルのディナー・ミーティング