国際交渉人が憂慮するトランプ外交「オウンゴール連発」後の未来

 

南シナ海が中国によって軍事化され、それにトランプ大統領のアメリカは、批判はするものの結局何もしてくれないのではないかという懸念は、フィリピンやインドネシア、ベトナムといった、地域で中国に対抗する国々の中で高まり、「自分たちで中国に対抗するしかない」と軍拡に進み、結果、南シナ海において軍事的な緊張が高まる事態になっています。

しかし、今年の建国70周年を祝う国慶節に際して行われた中国の軍事パレードの内容を見て、本気で対抗しようと考えるでしょうか?恐らく、能力は未知数としても、今の中国の軍備に対抗できるのは、圧倒的な軍事力を持つアメリカとロシアぐらいでしょう。その圧倒的な軍事力を誇示することで、習近平国家主席が今年に入ってからシフトチェンジしたOne China; One Asia政策の実現に邁進する姿勢が窺えます。その中国の軍拡とアジア地域におけるプレゼンスの迅速な拡大を許したのは、誰でもないアメリカ政府でしょう。

前任のオバマ大統領も結局中国との“友好”を追求しすぎたために、中国が国内外で起こす問題に十分に厳しい姿勢で臨むことができませんでした。その反動が、経済面でのトランプ外交と言えますが、オバマ政権時代に十分に成長し、強大化した中国を、トランプ大統領と雖も制することが難しい状況になっています。ゆえに、中国の強大化という点については、歴代政権から受け継がれたオウンゴールの負の遺産を、今、必死にトランプ大統領が巻き返そうとしているのだと考えられます。

しかし、トランプ大統領が挑んだ米中貿易戦争は、短期的に見れば、中国経済に打撃を与えましたが、共産党一党支配の下、資本主義を国家が指導する形で経営するという中国のシステムは、中長期的には、アメリカからの“攻撃”に耐性ができ、期待されたほどのダメージは受けないものと思われます。

代わりに、トランプ大統領が2選されるか否かは別として、一度出来上がってしまった中国脅威論の方向性は、誰が大統領になり、アメリカ合衆国を率いることになっても変わらず、“自ら仕掛けた戦争で大敗する”というベトナム戦争以降の、アメリカ外交と軍事の負の遺産が続くことになるでしょう。

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