国際交渉人が憂慮するトランプ外交「オウンゴール連発」後の未来

 

そして中国のアジアでの影響力をさらに高めたのは、韓国がアメリカの出方を見誤って、日本との間にあったGSOMIAの破棄をテーブルに挙げた際、アメリカの考えを十分早くに韓国に理解させることができなかったことも、アメリカ外交が侵したオウンゴールの例でしょう。

また、おそらくトランプ大統領は文大統領が大嫌いなようですが、ゆえに韓国の面子を立てることを怠け、気が付けば、北東アジアの安全保障上の要である日韓米の同盟にひびを入れることに繋がり、結果、文政権の韓国による中国への“隷属”につながる結果をもたらしています。

それは、私たちが考えていた朝鮮戦争の終結と38度線の意味とは違った方向に力強く進むことになり、このままいけば、中国の庇護の下、北朝鮮が韓国を吸収して半島の統一を成し遂げ、38度線の軍事境界線が、対馬海峡にまで南下してくることになりかねません。

しかし、トランプ大統領に韓国軽視を決めさせたのは、誰でもない文大統領と韓国ですが、“友人としての”日本とアメリカを失う韓国は、今後、中国の“指導”の下、全く予想だにしなかった国になっていくことが予想されます。これも、突き詰めれば、トランプ外交がもたらした(そして戦後すべての米政権がもたらした)オウンゴールではないかと思います。

そして、本来なら技術的にも資金的にも世界のリーダーとなり、ルールを設定できたはずの環境・エネルギー面の国際的な枠組みの一例であるパリ協定から一方的に脱退することで、リーダーシップは失いましたし、それ以上にアメリカ外交の信頼性を損なうオウンゴールをしてしまったように思います。

WTOやTPPに代表される国際貿易体制の構築においても、自らリーダーの座を降りる決定をし、結果、国際的な経済秩序を完全に崩壊させるというオウンゴールも連発してしまいました。

大統領就任以来、様々なエリアや地域で外交上のオウンゴールを連発し、アメリカの国際秩序におけるリーダーシップを崩壊させる方向に進んでいるトランプ政権とアメリカ合衆国。

中東地域やアジア、アフリカで政情が不安定になり、また地球的な問題がそう遠くないうちに人類の生存を脅かす恐れがある時代に、解決のために十分貢献できる力を持ちながら、それを自ら手放すというチョイスをしたことが、どのような未来を私たちに与えることになるのか、非常に戦々恐々としています。

アメリカが国際秩序を形成するカギを握っていたパックスアメリカーナの時代は終わったと以前お話ししましたが、その後、パックスXXとなる存在は現れていません。今後、世界が予測不能で曖昧で不安定なものになるであろうと予測される中、再度、リーダーとしての自覚を持ち、それを行動に移してもらいたいと期待しています。

image by: Aaron-Schwartz / Shutterstock.com

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