NY在住日本人社長が出張帰国で驚いたコンビニ惣菜のクオリティ

 

調理すればなんとか食べられるものが数点残っていましたが、ホテル生活で調理は無理。あとは、仕方ないので、お惣菜コーナーへ。数点だけが、申し訳なさそうに残っています。売れ残りのパック状のキムチとか、お漬物とか、おひたしとか、海藻サラダとか。なんだ、食べ物あるじゃないか、と突っ込まれそうですが、僕にとってこれらは「食べ物」という意識もなく、20年前の日本にいた頃から購入したことはありませんでした。仕方ないので、片っぱしからレジに持っていきます。すべてが100円代。合計しても1000円に届きません。

ほぼ全ての食品が売り切れている中、そんな状態でも売れ残っているものを食べる気にもならず。買ったはいいのもの、ホテルに戻っても、袋ごとベッドの上に置いて、仕事をしていました。窓の外の台風の音が強くなった頃、あまりにもお腹がすいて、「でも、食べるものないしな…」と、その存在すら忘れていました。あ、そういえば、何か買ったな、と気が進まないまま、数個のお惣菜をベッドの上に並べます。おつまみ感覚で、ニューヨークの編集部に仕事の電話をしながら、口に入れました

ニューヨークの社員から大切な仕事内容を電話口で話されていても、耳に入ってきません。今、口に入れたものが、あまりに美味しいから。「しゃちょう!?聞いてます?」と電話口で言われても、その頃には、お惣菜ドリームチームに夢中です。え?ナスのおひたしってこんなに美味しかったの?キムチってここまで、すごかったっけ?普段嫌いで食べないきゅうりまでミシュラン三つ星に感じてきます。電話を切って、一心不乱に食べまくる。「知らなかったよ、こんなにも近く、いたなんて、忘れられなのさ」な気分です。

日本の人たちはみんな知っているのだろうか。コンビニのお惣菜が、世界でもトップクラスの美味しさだということを。また笑われるだろうか?日頃、どれだけ不味いもの食ってんだ、と思われるだろうか。違う。僕は仕事で、世界有数のファンシーなニューヨークのレストランに取材で、毎週のように招待で行っています。でも、日本人であれば、そのどれよりも、今目の前の合計900円代のお惣菜残り物軍団の方がクオリティーは上に感じるはずです。特に、ナスの浅漬けなんて箸が止まらない。どんなドラッグよりも中毒になる(試したことないけど)。ナスでイク。十分な満足感でした。ここまで日本のコンビニのお惣菜が美味しいとは思わなかった。感動すらした。仕事は忘れた。この体験だけでも、台風ど真ん中の日に日本に来てよかった。

同時に、ちょっと不安にもなります。「これが食べられるなら、そんなに必死で働かなくてもいいのかもな」と少し頭によぎってしまう。よほどでない限り、購入可能な金額です。アルバイトでも、手に入る。世界の経済は、おそらく「いい生活したい、いいもの食べたい、いい服着たい」という欲望で動いている側面も少なからずあるはずです。世界は。でも、日本は? セブンイレブンとユニクロさえあれば、基本、そう不自由はしない。労働意欲に対しては、支障になるのではないか、と余計な心配もしてしまいます。オシャレ雑誌に載ってるSOHOやブルックリンのオシャレレストランよりも、ローソンのナスの漬物の方が絶対に美味しいから。

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