「北海道より東京の方が寒い」は本当か?考えられる2つの理由

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鼻で空気を吸い込んだときに鼻水が凍って小鼻がピタッとくっつくとマイナス10度以下。そんな体で覚えた気温判別法を北国育ちの人から聞いたことがあります。東京ではなかなか経験できない寒さが北国にはありますね。ところが、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんの知り合いの北海道出身者は、口を揃えて「東京の方が寒い」と言うのだそうです。山崎さんは、その理由を2つあげ納得していましたが、今年新たに知り合った北海道出身者との会話から、猛省する事態になったと述懐しています。

北の国の人たちのこと

私には北海道出身の知り合いが何人かいる。その人たちが口を揃えて言うのである。「北海道より東京の方が寒い」と。「そんなことはないだろう?」と反論すると、「いや、寒さの質が違う」と断じられる。大体まあこんな感じである。

自分としては当然、「東京の寒さなんて北海道に比べたら大したことないよ」くらいの大言を期待しているのである。然るに結果は先に挙げた通りである。

さて、自分の期待に反する言葉がこうも続くと、やはりそれなりの理由を考えずにはいられなくなるものである。一つには湿度の問題があるであろう。我々の体感温度と湿度は密接な関係にあり、湿度が低ければ低いほど寒く感じるのである。冬に吹く北風は東京では山越しとなるから当然湿度は低くなる。寒い筈である。

もう一つ考えられるのが冬備えである。そもそも寒い地方なのだから街や建物がもともと冬に備えてデザインされているのではないかということである。実際、車にも寒冷地仕様というのがある。その点、東京は無防備なものである。寒い筈である。

この1月、北海道出身の知人がまた一人増えた。20代の女性である。年が明けて急遽東京勤務となったのだそうで、借りた部屋はまだ段ボールだらけということである。その段ボールだらけの部屋に北海道の親が容赦なく段ボールを送りつけて来ると言う。中には北海道の食べ物がぎっしり詰まっており、隙間にも緩衝剤代わりに食べ物といった具合でちょっと閉口している、といった独り暮らしスタートアップあるあるを初めて会った時に披露してくれた。

この人が驚くほどに軽装なのである。東京の一般的感覚としては3月の終わりから4月の初めといった恰好である。着ているコートもとても真冬の仕様とは思えないほどの軽やかさである。前任者の重装備とはまるで違う。思わず、「車で来たんですか?」と聞いたくらいである。

彼女曰く、「東京の冬はめちゃめちゃ暖かい」とのこと。その言い方が何となく「冬備えをして来て損をした」といった感じに聞こえてちょっと面白かった。知人の北海道出身者には寒がりが多いということを伝えると、一言、「個人差でしょう」と微笑んで答えた。

何ということか!自分は僅か10人足らずのサンプルを以て「道民性」のようなものを勝手に創り上げ、湿度や冬備えなど後付けの理由まで考えてそう信じきっていた。およそ先入観というものはこのようにして出来上がるのであろうということを自ら経験することとなったのである。普段、会話でも文章でも「先入観」というものをひどく嫌っておきながらのこのざまである。新年早々、猛省である。

帰り際、彼女が手袋をしていないのに気付いて尋ねた。「手、冷たくありませんか?」彼女はにっこり笑って、両の手をコートのポケットに突っ込んだ。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

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