軍事のプロが解説。河野大臣「日米同盟はプライスレス」の意味

河野太郎Facebook_日米安保60周年
 

1月19日、外務省飯倉公館で「日米安全保障条約60周年記念レセプション」が開催されました。その乾杯の挨拶で河野防衛大臣が「日米同盟はプライスレス」と発言し、双方にとって重要であることを強調。これを「変わってきた」と評価するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは一方で、「安保マフィア」と呼ばれ米国の言いなりになっているマスコミ、官僚、研究者たちの存在を憂い、果たすべき仕事は別にあると訴えます。

まだ生きている「安保マフィア」

日米安保調印60周年ということで、新聞各紙がスペースを割いて特集を組んでいます。そうした記事の中で、久しぶりに「安保マフィア」という言葉を目にしました。

「(前略)『日本はプランBを検討すべきだ』   1月中旬にワシントンで開かれた『日米安保セミナー』(日本国際問題研究所、米戦略国際問題研究所共催)で、複数の日本側参加者からこんな声が上がった。   『プランB』とは、米国に大きく依存した現在の日米安保の代替案を意味する。   『安保マフィア』を自称する日米双方の政府当局者や専門家らが集まる同セミナーでプランBが語られたことは、『米国はいざという時に守ってくれるのか』という疑念がくすぶっている現実を浮き彫りにした。(後略)」(1月20日付読売新聞)

実を言えば、私は「安保マフィア」と呼ばれてきた日本人を信用してきませんでしたし、評価したこともありません。それは、「安保マフィア」イコール「米国の言いなりの人々」という印象があるからです。官僚はもとより、研究者、政治家、マスコミの世界に広く棲息し、同調しない人間を排除するカルテルを形成してきました。

この人たちからは、それこそ耳にタコができるくらい、「日本はアメリカに守っていただいているのだから、逆らうことはできない。アメリカにノーと言った途端、米軍は日本から撤退し、日本は裸同然の国になってしまう」と、まるでお念仏のように聞かされてきたものです。むろん、私は排除されてきた人間です。

もちろん、「安保マフィア」の言っていることは根拠のない思い込みに過ぎません。日本の安全にとって唯一の選択肢は、日米同盟を徹底的に活用することがベストですし、それしか現実的な選択はありません。しかし、米国にとっても日米同盟は他の国との同盟関係に比べても群を抜いて重要で、ほかの同盟国は日本の代わりをすることができません。米国は日本なしに世界のリーダーでいられないほどなのです。

そういう日本の位置づけを直視すれば、日米同盟を日本の安全と繁栄に活用すべく、主張すべきは主張し、必要な提案をすることが日本に求められることは言うまでもありません。

さて、日米安保60年に当たって、そのあたりはどのように変わったのか。変わっていました、変わっていました。代表格は河野太郎防衛大臣です。

「改定された現在の日米安全保障条約の調印60年を記念する式典が19日、外務省飯倉公館(東京都港区)で開かれた。河野太郎防衛相は乾杯のあいさつで日米同盟について、『プライスレス(金銭に代え難い)』と述べた。トランプ米政権による駐留米軍経費負担増の要求を念頭に置いた発言とみられる。   英語が堪能な河野氏は、通訳を介さずに日本語と英語で交互にあいさつ。日米安保条約に関し『わが国の防衛のみならず、米軍の前方展開や地域と平和の礎となっている』と語った。   その上で『この同盟の価値は金銭では計れない』と強調。会場には米政府の関係者も多数出席しており、河野氏が繰り出した“ジャブ”に苦笑を浮かべていた」(1月20日付産経新聞)

あとは、米国にとってどのように日米同盟が重要かを事実とデータで客観的に示すことです。これはマスコミ、官僚、研究者の仕事ですが、こちらがおぼつかない。昔ながらの「安保マフィア」のレベルに終始しているのです。

日米安保70周年がきたとき、「安保マフィア」なる人々が姿を消し、当たり前に米国側と話ができるマスコミであり、官僚であり、研究者であって欲しいと願っています。(小川和久)

image by: 河野太郎 オフィシャルFacebook

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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