緊迫の中東情勢。国際交渉人が警戒を強める2020年恐怖のシナリオ

 

その時、ロシアは?

中東地域の不安定化は、地域における影響力拡大を目論むロシアのプーチン大統領を喜ばせ、一帯一路を中東にまで伸ばしつつ、安全保障上の覇権拡大も狙う中国、そして地域のリーダーとしての地位を取り戻したいトルコを利することになるかもしれません。

実際に、今回の攻撃の応酬の最中、プーチン大統領はシリア・ダマスカスを訪問し、アサド大統領と会談し、その後、トルコのエルドアン大統領とも会談し、共同戦線をとることを再確認し、ロシアの影響力の拡大を印象付けています。 そして、そのロシアの完全なバックアップを得て、今や、イランは報復措置の一つとして、核合意はかろうじて維持しつつ、ウラン濃縮については無期限でレベルを上げる旨発表しました。

恐らく以前に到達した20%のレベルかそれ以上まで濃縮レベルを上げ、ついには兵器転用できるレベルまで上げるという行動に出る可能性が出てきました。 それは、これまでアメリカの一方的な離脱後も、何とか核合意を維持するために働き掛けを行ってきた欧州各国(英仏独)における対応の分裂が顕著になり、今や孤立を強めるイランは、自らのcapabilitiesの誇示を行うことで、アメリカやイスラエル、スンニ派諸国という多方面からの脅威に対抗するという手段に訴えかけるしかなくなってくるからです。

そして核合意の当事者であるはずの中ロもイランの“自衛的な行動”をサポートするとの意思表示をしていますので、今後、国際社会がハンドリングを誤ると、一気に(今、ハッシュタグで流行しているように)第三次世界大戦への坂道を転げ落ちてしまう状況になるかもしれません。

今後、米・イランの直接戦争になることはないと思いますが、イランは、革命防衛隊も国軍も、局地戦に長けており、圧倒的な軍事力を誇るアメリカ軍といえども、一旦戦いの火ぶたが切って落とされると、油断はできない状況になります(イランの指導部は、アメリカへの脅しとして【ベトナム戦争における米軍の惨状】に言及しています)。

地域を混乱に陥れることで、敵味方の区別がつきにくい状況になり、それゆえに、地域における相互不信が増殖し、それが“闘い”を一層ややこしくすることになります。緊張は続きますが、アメリカとイランのデリケートなやり取りについては、見守るしかありません。

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