緊迫の中東情勢。国際交渉人が警戒を強める2020年恐怖のシナリオ

 

気になる北朝鮮の動き

ところで、この情勢の裏で複雑な心境になっているのが、同じくトランプ大統領のアメリカに盾突き、非核化を先延ばしにする北朝鮮とそのリーダーである金正恩氏でしょう。 表面的には、軍事戦略においては多方面で戦線を開くことはタブーとされていますので、中東地域で火の手が上がり、アメリカがその対応に追われる限りは、アメリカによる朝鮮半島情勢への攻撃の可能性は下がり、北朝鮮にとっては、核開発やICBMの開発のための時間稼ぎができるため、北朝鮮をめぐる問題の“解決”は先延ばしになる、と考えられます。

しかし、今回のソレイマニ司令官の暗殺に見られるように、全面戦争には打って出ることはないかもしれませんが、米朝間の協議が行き詰り、北朝鮮が対米威嚇をエスカレートさせてしまった場合、無人攻撃機やドローンによるピンポイントでの暗殺作戦が実行される恐れが出てきます。

報道などでは、これまで金正恩氏の動向や居所をオンタイムで把握することは非常に困難とされてきましたが、実際には、かなり高い確率で特定できる状態になっているとのことです。ゆえに、アメリカにとって安全保障上の脅威が生まれるか、もしくはトランプ陣営の選挙戦にとって有利だと判断された暁には、意外な形での北朝鮮問題の終焉が訪れるかもしれません。 つまり、このメルマガでも何度もお話ししているイランを中心とする中東の混乱と、朝鮮半島情勢は、物理的な距離に反して、運命共同体と言えるのかもしれません。

2020年は、恐らくこの2つの緊張状態(イランと北朝鮮)がどのように発展していくかによって、今後、私たちが生きていく世界の様相が見えてきます。NBC+D(Nuclear,Biological and chemicalに加えて、digitalが加わる)を駆使した人類3度目の世界大戦へとなだれ込み、自らの生存を脅かしてしまうのか。

それとも、何とか多面的な調和を見出し、デリケートな安定を達成できるのか。 それは、今、アメリカとイラン両国がぎりぎりの線で踏みとどまり、そして、両国を取り巻く“その他大勢”も混乱に乗じることなく、調和を望む動きを取ることができるか否かにかかっているといえるでしょう。

7月には日本で久々のオリンピック・パラリンピックが開催されます。真にスポーツを通じた“平和の祭典”を楽しめることを切に願います。 本件については、年初からいろいろと情報が入っており、書きたいこと、お伝えしたいことも多々あるのですが、諸々の制約があることもあり、長くなってしまいましたが、今回はこのあたりで。

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image by: Nicky Urban / Shutterstock

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