【カンブリア宮殿】売上高3兆円。JR東日本の飽くなき挑戦

 

駅ナカを稼げる場所に~女性目線で駅を変える戦い

客の心をつかむため、常識にとらわれず戦ってきたJR東日本。その結果の成長は、驚くべきものだ。現在、JR東日本が1年間に運ぶ乗客は64億人。これは世界最大の数字だ。民営化後30年で、ついに年商は3兆円に迫った。立役者のJR東日本会長・冨田哲郎は、「国鉄時代の最後の10年で、国鉄に対する信頼は地に落ちたと思います。それを回復させるのが“鉄道の再生”。お客様目線で、使いやすい駅を作っていく」と言う。

冨田が女性たちと行ったのが、国鉄時代、男性客で溢れかえっていた駅構内を一変させた駅ナカの改革だ。例えば今、立川駅の改札内を見てみると、ホームのすぐ脇には乗り換え客が手早く立ち寄れるデパ地下顔負けの総菜売り場が広がっている。その向かいで行列ができているのは「ラ・ブランジュリ・キィニョン」。おいしいと評判の地元の焼きたてベーカリーだ。改札内は、女性に嬉しい店ばかりになっている。

この駅ナカは、その上のフロアも女性客をつかむ店がひしめきあっている。例えば本と雑貨のおしゃれなセレクトショップ「ペーパーウォール」。ここで売られているアロマは、立川駅構内のトイレで実際に使われている香りだという。改札内に革命を起こした、この駅ナカこそ、JR東日本の「エキュート」だ。

その店作りのコンセプトは、まさに駅の常識を変えるものだった。「『エキュート』の歴史をさかのぼると、立ち食いそばなど男性がメインで使っていた。もっと女性の方に、明るく華やかなイメージでくつろいでいただきたいという思いで作られました」(エキュート立川・伊藤由衣)

2005年に駅ナカのブランドとして発足した「エキュート」。女性をトップに据えたプロジェクトとして始まった。当時のJR東日本ステーションリテイリング社長・鎌田由美子は「『この程度でいい』と思った時点で、改革はできないし、新しい道は開けない」と語っている。それは、駅を女性目線の場所に変える戦いだった。

それから13年、「エキュート」の女性社員の格闘は続いている。スイーツ担当のエキュート立川・小谷舞子は、探し出した新たなショップをエキュートに加えた。黒糖スイーツの「黒糖DOKORO九六一八」だ。「基本的に若い女性がターゲットになっているのですが、シニア層の方にも買っていただきやすいと思って」と言う。

さらに最近、女性目線で力を入れているのが、小分けした袋で販売する商品だという。「孤食で食べられるものや、自分へのご褒美として買いやすい値段の商品を提案していただくことも多いです」(小谷)
駅ナカを稼げる場所に変えたのは、女性たちによる店作りだったのだ。「自分がこの仕事でなかったとしても、『立川に住んでいて良かった』と思えるような駅にしたいです」(小谷)

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