「森友」改ざんで自殺職員の手記公開、読売の紙面から感じた意図

 

「今後も適正に対応する…」?

【読売】は4面にベタ記事。34面社会面に記事。見出しから。

(4面)
「森友」改ざん再調査せず
首相「今後も適切に対応」

(34面)
森友改ざん 自殺職員の妻 提訴
国と佐川元長官に賠償請求

uttiiの眼

4面にベタ記事の本記、関連で社会面に記事ということならば、ごく普通の対応のように見えるが、そこは《読売》、そうではない。

まず4面の記事は、厳密に言えばこの問題の本記ではない。本記ならば、週刊誌が遺書と手記を報じ、遺族が国と元高級官僚を提訴したという事実を端的に伝えるものでなければならないが、そうなっていない。この記事は、「財務省の官房長が森友学園に関する決裁文書改ざん問題について省内の再調査を行わない考えを示した」というもの。主語は茶谷官房長。官僚が何かについての方針を決めたという“ニュース”一般に価値がないとは言わないが、自殺した夫の無念を晴らすため妻が提訴したという、読み手の情動を揺さぶる要素を排除し、乾ききった信号のようなものを掲げていることからは、一連の情報の訴求力を可能な限り減じておこうという、編集サイドの意図が感じ取れる。

4面記事の後段は、安倍首相のリアクション。「大変痛ましい出来事で本当に心が痛む。改めてご冥福をお祈りしたい」に続いて、「麻生財務相の下で事実を徹底的に明らかにした。改ざんは二度とあってはならず、今後も適正に対応する」と述べているという。だが、「今後も適正に対応する」というのは、改ざんが発覚した後の調査や処分が十分であり適正なものだったという意味だろう。よく言えたものだ。

34面社会面の記事だけは、提訴の意味合いを最低限の表現で伝えるものになっている。余計なお世話かもしれないが、こちらを1面か2面に掲載すべきだっただろう。

「政治家の指示だったのではないか」

【毎日】は1面左肩と5面政治面。26面に手記の全文。31面社会面は関連記事。見出しから。

(1面)
森友改ざん 遺族が国提訴
手記に「佐川氏の指示」

(5面)
野党 森友改ざん再検証へ
自殺職員遺族提訴

(31面)
自殺職員、苦悩と批判
「理財局が人生壊した」
妻「佐川さんは真実を」

uttiiの眼

1面は本記。5面は野党がこの提訴をきっかけに、森友問題で公文書改ざん問題の再検証を行う動きがあることを伝えている。既に「森友問題再検証チーム」を野党4党で起ち上げていて、野党は桜を見る会の問題などと合わせ、政権の体質に迫りたいという。

早速、衆院内閣委では柚木道義議員が「官僚が独断で、クビが飛びかねないことをするわけがない。政治家の指示だったのではないか」と追及したという。菅官房長官は「私は知る由もない。少なくとも私ではない」と微妙な答え方をしている。それ以上、どんなやりとりがあったか書かれていないが、菅氏については、改ざん行為の直前、指示役や実行役の官僚たちとこの問題で会合を持っていたことが分かっている。2017年2月22日の官邸での会合については、キチンと追及されたのだろうか。

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