「ロケット開発の父」糸川英夫博士は、どう独創力を磨いたのか?

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日本の宇宙開発において多大なる役割を果たし、小惑星「イトカワ」の名の由来にもなった糸川英夫博士。氏の仕事は今も語り継がれていますが、彼が語った「独創力を発揮する3つの条件」は少々意外なものでもありました。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では糸川氏の弟子でもある的川泰宣氏が、その3つの条件を紹介しています。

独創力を発揮するための三条件

ペンシルロケットの開発者であり、「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」といわれる糸川英夫博士。『致知』2010年2月号より、その薫陶を受けた的川泰宣氏のお話をご紹介します。

糸川英夫博士の教え 的川泰宣(宇宙航空研究開発機構〈JAXA〉名誉教授・技術参与)

糸川先生はよく「独創力」の大切さについて話されていましたが、一般向けに行われた講演会でこんなことがありました。

先生は、幼い男の子を抱いて前の席で座っているお母さんに「その子を独創力のある子に育てたいと思いますか?」と聞かれました。「もちろん」と答えたお母さんに、「そのためにあなたはどう育てるつもりですか?」と聞くと、そのお母さんは「独創力を発揮するには自由でなければいけないから、この子がやりたいと思ったことは何でもやらせます」と答えました。

先生は天井を見てしばらく考えていましたが、「あなたは数年すると、絶望するでしょうな」と言われたんです。「何でも好きにやって独創力がつくのならチンパンジーには皆、独創力がある」と。

先生が続けて言われるには、「人間には意志というものがあって、自分はこれをやりたい、という思いにどこまでも固執しなければいけない」と。いったんやりたいと思ったことは、絶対にやり遂げるという気持ちがなければ、やっぱり何もできません。一度決心したことは、石にしがみついてでもやり遂げる強い意志が必要だ、と第一に言われました。

第二には、過去にどんな人がいて、何をやったかを徹底的に学習しないとダメだ、と。

アインシュタインは、ニュートンのことを徹底的に学習して、ニュートンが考えることはすべて分かるという状態にまでなった。そうやって初めて、ニュートンの分からないことが分かるようになったんです。だから過去の人がやったことを決して馬鹿にしてはいけない。これまで先人が残した考えの上に乗っかって、初めて新しいことが生まれる。だから、徹底的に勉強しなきゃいけないと言われました。

第三は、少し意外だったんですが、自分が何か独創力のある凄い仕事をしたと思っていても、世の中が認めなければそのまま埋もれてしまうことになる。世に認められるためには、他の人とのネットワークをしっかり築いてよい関係をつくっておくことが大事ですと。

先生はその後、「私は独創力と縁のないことを言ってるように聞こえるかもしれないけれど、世の中の独創力はそうやってできてるんですよ」と話された。先生はまさしくそれを貫かれたと思うんですね。同時代の人がやっていることを真似るようなことは決してしないけれども、過去のことは非常によく勉強されていますよ。

糸川先生は、誰も考えなかったことを考えるのが大好きなんですよね。でもその基盤には、自分が正当に継がなきゃいけないものを、物凄くしっかり勉強しているということがあるわけです。その上に立って、初めて独創力が生まれてくるんだなということは、先生を見ていてよく感じました。

image by: Danny Ye / Shutterstock.com

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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