リアル店舗は必要か。コロナ後のデジタル時代に小売が生き残る道

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新型コロナウイルスの影響により、加速度を増す社会のデジタル化。そんな時代にあって、小売業の「リアル店舗」はこの先どのような道を辿ることになるのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では経営コンサルタントの梅本泰則さんが、マーケティングの世界的大家の著書を紹介しつつ、今後の「リアル店舗」展開において求められる施策について考察しています。

デジタル時代の小売業

新型コロナのおかげで、いかに我が国のデジタル化が遅れているかがよく分かりました。行政はもとより、医療、教育もデジタル化が進んでいません。一般企業も同じではないでしょうか。これからは、デジタルをうまく取り入れたところが成長していくでしょう。

コトラーのリテール4.0

フィリップ・コトラー教授の最新本、『コトラーのリテール4.0』を読みました。「リテール」とは「小売」のことです。この本には、これからの小売業のあり方が書かれています。コトラー教授はマーケティングの大家ですから、きっと小売業のマーケティング手法についても紹介してあると思い出版後すぐに買いました。さすがに面白い内容がたくさん載っていますが、デジタル用語がふんだんに出てきます。初めて目にするカタカナ英語も多く、結構読むのに苦労をしました。

それはともかく、この本に書かれていることを参考に、今後のスポーツショップのあり方を考えてみました。タイトルに「リテール4.0」とあるくらいですから、「リテール1.0」「リテール2.0」「リテール3.0」もあります。

「リテール1.0」は、1910年代のアメリカにセルフサービスの店舗が登場した時から始まりました。豊富な品ぞろえと、競争力のある価格を特徴とし、さらに売り手をなくした店舗です。「リテール2.0」は、1960年代に登場したショッピングセンターの時代になります。広大な敷地にさまざまな店舗が軒を連ねて、人々が楽しむ場所となりました。「リテール3.0」は、1990年代の後半にECショップが登場したことで始まります。アマゾン、イーベイ、アリババに代表される「小売業」ですね。

そして、「リテール4.0」は、2010年以降急激に発展したデジタル技術によってもたらされた小売業の姿を指します。その特徴は、消費者がぼう大な情報に接することができるようになったことと、メーカーが直接消費者に接することが簡単になったことです。

戦略の変化

そして、デジタル技術の発達によって、それまでの小売業の戦略が変わっていくことになります。つまり、最近まで小売業にとっての一番の戦略は、「立地の良さ」と「豊富な品ぞろえ」にありました。ですから、行きやすい場所に広い売り場を構え、ぎっしりと商品を詰め込んだ小売店が隆盛を誇っていたのです。まさにこれが競争に勝つ秘訣でした。

ところが、この手法は「リテール4.0」の世界では通用しません。ECショップの出現によって、必ずしも広い売り場の店舗は必要なくなりました。そして、立地はスマートフォンにとって代わられ、手のひらに移ったのです。従来の小売店にとっては、大きな時代の変化が来てしまいました。これに適応できるかどうかが、今後の勝負の分かれ目です。

だからといって、コトラー教授はECショップだけに力を入れよと言っているわけではありません。リアルな店舗も重要だと言っています。なぜなら、アクセンチュア・ストラテジー調査によれば、消費者の73%は、店舗の販売員と交流して問題解決をして欲しいと思っているからです。

そして、消費者はネットの世界とリアル店舗を行ったり来たりします。つまり、ECショップも必要ですが、リアル店舗の役割が無くなるわけではないのです。とはいえ、今までの店舗のあり方を変えていかないと、これからの消費者には受け入れられません。そこで、コトラー教授はリアルな店舗にいろいろな要求をします。

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