中産階級は貧困層に。新型コロナが世界中で生む差別、格差、分断

 

結果どうなるか。先進国・途上国の別なく、いわゆる中産階級に大打撃を与え、貧困層に叩き落とし、各国経済における格差の拡大を招くことになります。そしてそれは、さらなる分断を国内外に生むことになりかねません。

これまで3週続いてAfter Coronaの覇権は米中2大国によって争われ、その他の国や地域はどちらのブロックに入るのかを、そう遠くないうちに選ばされるだろう、とお話ししてきました。

しかし、この米中の置かれている覇権国としての立場も決して安泰とは言えず、【分断】が命取りになるかもしれません。

アメリカについては、Black Lives matterのデモの全国への広がりと、それに対するトランプ政権の対応の拙さは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で傷んだ経済にさらなる追い打ちをかける形になっています。

そして、その分断をアメリカと覇権争いを繰り広げる中国にうまく突かれ、利用されています。

例えば、中国外交部の報道官である華春瑩氏に、コロナや香港問題で次々と繰り出されるアメリカ政府からの非難への“感情”を表現する際に、ジョージ・フロイド氏が息絶える直前に白人警官に言ったとされる「息ができない」という言葉を用いて痛烈な皮肉で、アメリカからの情報戦を非難しています。そしてそれを見事に民主党サイドに引用され、現時点では、バイデン氏に支持率で差をつけられるという結果になっています(とはいえ、実際のところは本当にバイデン氏優位とは言えません。トランプ支持を静かに行うサイレントマジョリティーが結構存在すると言われていて、現時点で大統領選挙を行わない限りは、トランプ氏が負けるとは言えないと言われている点には、アメリカ社会が抱える暗く深い闇があるのだと思います)。

香港問題の習近平指導部の対応についても、アメリカの分断の隙を突いて、一気に【国家安全法】の制定にこぎつけ、香港における民主化の排除と中国化の深化を完成させようとしています。米英を中心にそれに気づいて非難しており、日本も加わって国際法違反の指摘をしていますが、残念ながらアメリカが本腰を入れて反対できていないのが弱点として露呈し、まだ中国政府の強硬姿勢を崩せていません。

トランプ氏は、過去の戦時大統領になぞらえて、今回のCOVID-19との闘いを戦争に例えていますが、本当に戦争を戦うつもりならば、Black Lives Matterを含む様々な側面で要求を受け入れ、妥協の末、人種の壁を超え、かつ州政府とも協力し、加えて雇用の保証を確約したうえで挙国一致体制の下臨むべきところですが、これまでのところ、対立を煽ることしかできておらず、コロナとのダブルパンチで全米は分裂の危機にあります。

では、もう一方の中国は安泰でしょうか?政治体制的には共産党一党支配ゆえに統制が効いていると言われていますが、「中国陣営」も盤石とは言えません。

例えば経済開放以降、高い経済成長を成し遂げてきた中国も、COVID-19で傷つき、世界銀行などの見立てでは、1970年以降最も低い年率1%弱の成長率にとどまるのではないかと言われています。これは、共産党を支持しつつも半ば強制的に従わされてきている企業、特に国際的な企業からのバックラッシュを食らい、共産党支配の正統性を揺るがすことにもなりかねません。

そこに、「2019年12月初旬には分かっていた新型コロナウイルス感染拡大を1月まで国民にも隠蔽し、結果、感染を拡大させた」ことが明らかになり、また初動にも問題があったため、国民の怒りを買っていますし、米欧との対立を激化させ、中国企業への風当たりを必要以上に強め、中国の発展を鈍らせたとの批判が渦巻いているのも大きな誤算でしょう。

加えて、公式にはCOVID-19理由での失業率は6%と発表されていますが、世界銀行の調べでは、農村部の状況も加えると、恐らく全土での失業率は20%を超えていて、結果的に広がる経済格差ゆえに、国民は共産党に対して爆発寸前の危険な状態だと見る情報も数多く入ってくるようになりました。

中国共産党としては、皮肉にも、アメリカのビジネス界と同じ、大企業のサポートについては、経済発展のエンジンとして支援を手厚くするようですが、数多く乱立し、それなりに発展を支えてきた中小企業にまでは手が回らず、ビジネス面でも分断が明確化してきています。

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