そして分断といえば、今や国際案件にまで発展した香港の一国二制度問題です。香港の民主化デモへの対応を誤ったとして、ここでも習近平国家主席とその体制に対して批判が高まり、弱腰ゆえに欧米の介入を助けたとさえ非難されています。それへの答えが一気に強硬サイドに振り切った【香港国家安全法】の制定への動きで、世界を敵に回してでも、政権としては覚悟を見せる機会としても散られているように思われます。
ただ、先週にもお話ししていますが、香港問題は、すでに米国においては“国内政治化”しており、議会が通した香港人権民主化法が発動される事態になれば、トランプ大統領としては、米国内の中国の資産差し押さえと凍結という手段に打って出ることが出来、それは同時に中国共産党及び習近平国家主席の息の根を止めることを意味しますので、覇権拡大を目指す中国にとっては大きな痛手となるでしょう。
その兆しが出てきているのが、一帯一路政策を用いたOne China, One Asia政策でしょう。その担い手は、借金漬けにされた国々(スリランカ、モルジブなど)や、南シナ海で領有権争いを繰り広げるフィリピンやベトナムなどが代表例ですが、その背後にはしっかり欧米諸国がついています。欧米政府と企業は、コロナ前の過度の中国依存を見直す機会として、次々と資本を引き揚げにかかっており、かなりのプレッシャーを中国に対してかけ始めています。
まだEnd Gameになっていないのは、幸か不幸か、米国内での分裂の激化で、中国としては、企業に香港市場への上場を半ば命じたり、外交的な情報工作を行ったりすることで、米国内、そして欧州内での分断を煽り、何とか状況の挽回を図っています。
しかし、習近平国家主席とその体制がいかにコロナショックを抑え、迅速に経済を立て直すことができるか。それは、中国共産党の正統性さえも揺るがしかねない危険な状況にあると言われています。
米中2大覇権国ともに万全の状態とは言えず、国際情勢は大いに不安定な状況ですが、かといって、欧州や日本が、その隙を突き、力を増大してリーダーシップを取れるかといえばそうではなく、各国ともにコロナによって深く傷ついてことで自国のことで瀬いっぱいであるため、やはり米中による国際支配・ブロック化がより強化されることには変わりはないでしょう。
それはつまり、非常に不安定で不均衡な世界を意味し、国の別なく、さまざまな格差が拡大し、これまで国際協調や連帯という【まやかし】の下、巧みに隠されてきたいろいろな形の“差別”が顕在化するのだと思います。
コロナショックは、各国社会・国際社会に存在していた隠れ蓑を、半ば暴力的に強制的に引き剥がし、各国社会の問題を浮き彫りにすることで、結果、社会における、そして世界経済における構造的な分断が鮮明化させることになるのではないかと恐れています。
皆さんはどうお考えになりますか?ぜひご意見をお聞かせください。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』より一部抜粋。)
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