毎月の保険料を支払わずに年金が貰える人がいるのはなぜなのか?

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保険料を支払わずとも国民年金を受け取ることができる「国民年金第3号被保険者」に対して、不満を訴える声が頻繁に聞かれます。この制度、果たして本当に不公平なものなのでしょうか。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、当制度が誕生した背景を改めて辿りつつ、「第3号被保険者=不公平」が大きな誤解であることを解説しています。

国民年金保険料を支払わなくても年金が貰えてしまうのはなぜなのか

サラリーマンや公務員の扶養に入ってる、年収が130万円未満であるような人は国民年金第3号被保険者と呼ばれ、国民年金の毎月の保険料を支払わなくても支払ったものとして扱われるものがあります。この第3号被保険者は昭和61年4月からできたものですが、平成9年くらいから「保険料払わなくても将来は年金として貰えるなんて不公平だ!」って批判されるようになりました。

背景としては、女性の社会への進出が促進されてきたという点があります。昭和54年に女子差別撤廃条約が国際連合で採択され、日本は昭和60年に条約を批准(内閣が法律の成立を確認するというような意味。批准書を外国と交換すると国際法的な効力が発生する)し、締結国は差別撤廃の義務が課された。だから、日本は雇用条件に関して男女の差があったから、批准の前にまず昭和60年に男女雇用機会均等法を作って差別をなくす必要があった。

平成9年には労働基準法の改正により女子の時間外労働や深夜業も可能になり、原則として男性と対等となり、より女子の雇用の機会が増える事になりました。
もともと女子は時間外の労働とか深夜業は禁止されていたんです。

その平成9年からは夫婦共働き世帯が、妻が専業主婦であるという世帯より多くなった。だから、働く女性から国民年金第3号被保険者は不公平だ!という声が強くなった。私はちゃんと働いてるのに働かないで年金貰えるなんて許せないと。

さて、僕はこの国民年金第3号被保険者制度に対しては、制度としては不公平ではない事を書いてきました。たとえば、夫婦共働きで共に25万円稼ぐ場合(両者で50万円)、夫婦ともに同じ保険料を納めます。まあ、3万円の保険料納めるなら、総額6万円の負担をする。年金総額としても、夫は100万円、妻も100万円受給するというようになる。

じゃあ、専業主婦世帯だと夫が単独で50万円稼ぐなら、単独で6万円の保険料負担をする。将来的に夫が130万円の年金を受けて、妻が70万円の年金を受けるというような事になる。両者の世帯で見る保険料負担と、将来の給付総額は同じになるように設計されている。かなりザックリですがそうなるので、厚生年金世帯での不公平は生じていない。

しかし、これだけの説明では納得してもらったりしてもらえなかったりする。確かに不公平「感」はあるので、それ以上説得はしない。不公平かどうかを考える時、そもそも今の厚生年金の従来(旧法)の形と比べなければいけない。本来はそこから説明しないといけない。

昭和61年3月までの制度は、夫が厚生年金に加入して将来は厚生年金を受給し専業主婦の妻は将来は無年金という考え方でした。でも夫の支払う厚生年金保険料で、将来の厚生年金の給付は妻の生活費をひっくるめた支給をしますという形だった。だから配偶者加給年金も今の制度のように妻が65歳までという縛りはなく、夫に一生加算されていた(離婚したり、妻が死亡したりしないなら)。厚生年金が世帯単位の年金という所以。

夫がすべての厚生年金保険料を支払い、将来の年金給付は夫婦ひっくるめた給付を夫に支給する。つまり、国が年金を支払う際は、年金200万円支払うなら、夫にその200万円すべての年金を支払うという事だった。妻は無年金だけど、夫に夫婦二人分の生活費としての年金を与えますと。夫がすべての年金を握るわけですね。

しかし、このままだともし離婚した場合は、妻は無年金のままだから何の保障も受ける事が出来ません。夫が夫婦二人分の年金を独占して受けてるわけだから。それじゃあ結婚する女子にとってはあまりに危険すぎるわけです。

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