【書評】辛坊治郎氏が指摘。日本を滅ぼす本当の「ウイルス」とは

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社会問題が山積する我が国ですが、最も深刻なのは「少子高齢化」であることは衆目の一致するところです。まさに「亡国の危機」に瀕していると言っても過言ではありません。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、人気キャスターの辛坊治郎氏がこの国の「現実」と「未来」について論じた一冊。果たして日本を救う手立てはあるのでしょうか。

偏屈BOOK案内:辛坊治郎『日本再生への羅針盤:この国の「ウイルス」を撲滅するにはどうしたらいいのか?』

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日本再生への羅針盤:この国の「ウイルス」を撲滅するにはどうしたらいいのか?
辛坊治郎 著/光文社

辛坊治郎は関西発の報道情報番組の司会、ニュース解説などで幅広く活動している。わたしの住む埼玉県では見られない。だから辛坊治郎の思想や行動は本で知るしかない。なぜかこの関西人の時評が好きで、何度か紹介してきた。「FLASH」で連載中の「辛坊治郎のニュース食い倒れ!」をもとに書籍化したのがこれだ。

PART1/政治・経済編で6本、PART2/社会・事件編で9本、PART3/海外・外交編で8本、年金・医療編で7本の記事が並ぶ。これからの日本で、一番不安なのはやはり少子高齢化問題だ。現代日本が抱える問題の核心といっていいのかもしれない。統計的に確定するのは2020年9月だが、2019年末の推計によれば2019年1年間に生まれた子供の数が、どうやら90万を切ってしまったようである。

86万人程度か。今後ずっと年間86万人の子供が生まれ、日本国民全員が100歳ちょうどで死ぬという極端な未来予測をしても、100年後の総人口は8,600万人にしかならない。算数に弱いわたしでもわかる。しかし、実際に、日本の将来の人口がどうなりそうかというと、8,600万人どころかなんと5,000万人くらいという予測だ。日本の人口が減ることで、困ることは何か。何が問題なのか。

それは人口バランスが安定するまで、日本のシステムが持つのかということ。まもなく危機が訪れる。いまでも高齢者の人口は激増しているが、2022年から団塊の世代が75歳になりはじめ、2025年には全員が75歳以上になる。さらに、2040年前後には、団塊の世代の子供たちの世代が退職する年齢に達する。

団塊の世代の子供たちはそれなりの数いるのだが、なぜかその子供、つまり団塊の世代の孫世代の人口が伸びず、2040年ごろに日本の人口バランスが「最悪期」を迎えてしまうようである。現役世代が高齢者と子供の医療・介護・年金を支える現在のシステム上、「最悪」に至るというしかないではないか。その「最悪」をどう乗りきればいいのか、果たして乗り切れるのか。

最も望ましいのは、いま予想されている人口バランスを覆すことだ。現役世代を増やせばいい。正攻法はいくらでもあるが即効性がない。そこで考えられるのは、現役世代が引退する年齢を遅らせ、その間の社会保険料と直接税の担い手になってもらうこと。いくつかの政策が動き始めているが、まだ不十分だ。

もうひとつの現役世代拡大策は、外国人労働者の受け入れだ。望ましいとは思えないが、背に腹はかえられぬ。受け入れの拡大が決められたが、うまく機能していないようだ。進み行く少子高齢化を解決するには、高齢者の医療・介護・年金の水準をより落とすか、現役世代の負担で高齢者の面倒を見るシステムを見直すことであるが、どちらも政治的にきわめて困難である。

迫り来る超高齢化社会に対する、有効な施策の実施が絶対に不可能なわけは、高齢者の票に頼る政治家を抱える日本の病理である。一番愚かなのは政治に関心を持たない若者、中高年、つまり現役だ。あなた達が高齢者になった時、医療・介護・年金の全ては機能不全を起こすだろう。自業自得なのかな。

編集長 柴田忠男

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