「黒い雨」原告全面勝訴を歓迎した各紙、解説しなかった読売新聞

 

衝撃的な判決

【東京】は1面トップに6面関連記事、25面社会面にも記事。見出しから。

(1面)
「黒い雨」救済判決
全84人 被爆者と認定
広島地裁 援護区域外 初判断
被爆75年 原告の供述重視(解説)

(6面)
降雨線引き否定 国衝撃
「黒い雨」原告全面勝訴
民事畑のベテラン
「被爆体験者」ら 歓迎の声
早期救済 難航か

(25面)
被爆の真実 届いた
「黒い雨」訴訟
提訴5年 82歳原告団長万感
「判決 このまま確定すれば」

1面本記に、共同通信の記者による「解説」が掲載されている。援護法と援護行政の歴史のなかで、80年代以降、国が国民の理解を得るためとして「科学的根拠」を援護拡充の条件としてきたことは理解できるとしても、原爆投下から75年たち、被爆と病気との因果関係を証明することは困難で、「科学的根拠に重きを置いた結果、必要な人への援護に漏れが出てくるのであれば本末転倒だろう」と言っている。

●uttiiの眼

6面記事は、リードで「行政側が認定の要件として主張してきた「科学的根拠」を司法が否定したことで、国には衝撃が走った」とするが、上記の共同通信記者の解説にも触れられている「科学的根拠」を「司法が否定した」とあるのは、説明を要するように思う。

判決文を見ると、判決が「科学的根拠」云々を「否定」しているととれる箇所は、以下の部分。つまり、これまで被爆者援護法では「特例区域」にいただけでなく特定疾患に罹患したという結果から、類型的に判断して(3号被爆者に)認定してきたとしたと分析したうえで、「その際に、黒い雨の放射性微粒子の有無や構成、放射線量などが具体的に問われることはなかった。…本件訴訟だけ、科学的、物理的根拠を重視するのは相当ではない」という言い方になっている。

そもそも、特例で「大雨地域」の人に認めた時、黒い雨が身体に影響を与えたことを科学的に証明せよとは言っていなかったのだから、原告たちだけにそれを求めるのはおかしいと論難されているわけだ。判決が否定したのは、「科学性」ではなく、根拠のない「線引き行政」だった。

《東京》はこの判決がどのような影響を及ぼすかについて、2つのことを言っている。1つは長崎で、国が定めた指定地域外にいた人が被爆者認定を求めている裁判への影響。もう1つは、原告たちと同様の境遇で健康被害に苦しんでいる人たちへの影響。さらには、東電福島第一原発事故で被曝し、健康問題を抱える人たちへの影響もありうると見られている。

image by: Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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