徳田安春医師が新型コロナ「第一波」PCR検査基準を検証する

 

2020年4月、厚労省とLINEが行ったオンライン調査では、軽症を中心に新型コロナウイルスを疑いうる症状を持つ人は約7%いた。東京の人口の1200万人中では約80万人いることになる。キャパシティーが増えて検査が可能になってきた現在、このような症状がある80万人を対象に、医師による問診や検査を行うとどうなるかを考えてみる。

まず、日本の場合、感染者は社会から悪者扱いされるような文化があると指摘されている。大阪大の調査で、「感染は自業自得だと思う」と答えた日本人の割合は米国人の10倍もいた。よほど思い当たることがないと自ら検査を希望することは無いだろう。また、家族に高齢者がおり、感染が伝播することを心配して受診する人もいるだろう。いずれにしても、患者の軽微な自覚症状を過小評価してはいけないのだ。

症状が弱くても感染確率によって検査をすべき

80万人のなかに感染者が1万人いるとすると、検査前確率は1.25%となる。これでも確率としてはまだ低い。しかし、医師が問診をして感染の疑いが強いと診断した人を対象に検査をすれば、検査前確率が上がり、診断確率が上がる。逆に、検査前確率を問診によって低下させることができれば、診断検査そのものが不要になる。

このような推論で条件付き確率を変化させ、診断確率を調整し、診断パワーがアップする。オンライン診療で可能な問診だけでも、検査前確率をかなり上げることができる。新型コロナウイルス感染症の診断確率を高くする症状には、咳、発熱、呼吸困難、下痢、筋肉痛、嗅覚異常などがある。PCR検査は、症状の強さではなく、検査前確率の高さで判断しておこなうべきなのだ。

現場の医師の判断を有効活用し、検査前確率を絞りこんでから、新型コロナウイルスのPCR検査のように特異度(非感染者を陰性と正しく診断する確率)の高い検査で陽性となれば、検査後確率が高くなる。医師の問診によって検査前確率の高い人を拾い上げ、その人たちを対象に検査をたくさん行うことによって、できるだけ多くの感染者を見つけ出す。ホテルや施設に保護・待機していただく。その人々の濃厚接触者を追跡する。それが、感染拡大防止につながる。

病院での急性期ケアが済んだ軽症者は、医療管理が可能な専用施設に移すとよい。その方が患者さんのQOLも良くなる。患者の爆発的増加に対応するため、ホテルやイベント会場を改造し、専用施設に変換すればよいのだ。海外で成功した専用施設には「鍵と機能」があった。3つの鍵は、迅速設置、巨大スケール、低コスト。5つの機能は、待機、トリアージ、基本的医療、頻回モニタリングと迅速な患者搬送、基本的な社会生活の環境設置だ。

image by: Shutterstock.com

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