日本が領海警備の根拠法としている「領海等における外国船舶の航行に関する法律」(2008年)も国連海洋法条約に準拠し、「公船」を適用除外としています。そんな日本と比べると、中国は国連海洋法条約を批准したうえに、「領海および接続水域法」(1992年、以下、領海法)を制定し、国の安全と海洋権益を守る姿勢を明確にしています。許可なく中国領海を侵犯した外国船に対して強制措置を講じる場合の根拠法でもあります。
しかし、疑問が残ります。中国側はなぜ、領海法を根拠として海上保安庁の巡視船を取り締まろうとしないのでしょう。漁船を追い回したのなら、それを阻止するために割って入った日本の巡視船にも同様な姿勢を示すべきではないでしょうか。
実を言えば、中国側にはできないのです。尖閣諸島の領有権について根拠が弱いことを自覚しており、日本側と衝突でもしたら国際的なイメージが悪化するばかりでなく、下手をすると国際資本が中国から逃げ出した天安門事件の二の舞になりかねないからです。そうした中国の本音の部分を知り、必要な動きをするのが外交というものです。
日本が中国に対抗するには、同じ名前、同じ文言で国内法を制定することが第一歩です。領海法の制定によって初めて、日本は中国と対等の条件で外交交渉に臨むことができます。国内法の制定は、国際司法裁判所への提訴にも必要な準備です。
中国は領海法を制定するとき、日本への忖度などしませんでした。防空識別圏の設定も、当然の顔をしてやったのです。日本も同じようにやればよいだけです。政策的な評価は分かれますが、日本は尖閣諸島を国有化したではないですか。そのときと同様、中国は吠え立てるでしょうが、そこまでです。それくらいで動じてはいけません。さあ、コロナ対処に手一杯の日本に、できるかな。(小川和久)
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