コロナだけではない。1週間で1万人以上が救急搬送、熱中症の事実

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命にかかわる「危険な暑さ」が続く日本列島。メディアでは連日、熱中症への注意喚起がなされていますが、緊急搬送者は増える一方となっています。我々はこれから、熱中症にどう対処していけばいいのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では著者で健康社会学者の河合薫さんが、これまでの研究により明らかになった熱中症に関するデータを紹介。さらに「感染症と熱中症との共存」が人類最大の課題になるという見方を記しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

死者1,135人!「熱中症」の未来予測

10日から16日の1週間で、なんと1万2,804人もの人が熱中症で救急搬送され、都内では53人が亡くなっていることがわかりました(15日まで)。

熱中症患者は2000年以降、急増しています。特に今年は連日の猛暑に加えコロナ感染拡大防止で外に出る機会が減り、体が暑さに慣れてないので、熱中症が起こりやすいのです。

9月以降も、平年より高い気温が予想されているので、くれぐれもエアコンをうまく使って、水分補給などにつとめてください。

ということで、今回は「熱中症」について、あれこれ書きます。

そもそも日本で熱中症への関心が高まったのは、1990年代後半以降です。それまで「生気象学=気象が心身に与える影響を科学的に捉える学問」は、季節性うつ病や冬季の脳血管系疾患死亡などが主たる研究対象で、熱中症を始めとする熱ストレスに関する研究はかならずしも多くはありませんでした。

1990年代後半から温暖化の影響による猛暑日の増加や、ヒートアイランド現象で夜間の気温が下がらなくなり、自宅で熱中症を発症する人が増加。徐々に、社会問題となり研究者の関心も高まっていきました。

特に、2003年の夏のヨーロッパにおける熱波をきっかけに、世界的マターとなり、熱波による死亡に関する論文が急増。高齢者や基礎疾患を持つ人々が熱波の影響を受けやすいことがわかりました。

2004年3月にはWHOが「異常気象、気候イベントに対する公衆衛生対策」というテーマで国際会議を開催し、各地で熱波による健康被害を予防する取り組みが進められるようになりました。

国内で、これまで死亡者が最も多かったのは、2012年の1,135人です。この年は記録的な猛暑で、群馬県館林では32日間も「猛暑(35度以上)」が記録されました。また、研究が蓄積されたことから、

  • 熱中症患者の発生と日最高気温・日平均気温とに強い関連があり、具体的には、25℃あたりから患者が発生し、31℃を超えると急激に増加する
  • 同じ暑さでも、「暑さに対する慣れがあるかどうか」が極めて重要
  • 平均気温が数日連続して32℃を超える猛暑の第一波時に多発する

さらに、

  • 性別では男性が多く、全体のおよそ3分の2
  • 年齢別では、65歳以上が8割と最も多く、独居老人や高齢者だけの世帯が大半を占める

などがわかりました。

高齢者は「温度」の感度が低下するので暑さを感じにくく、喉の渇きの感度も鈍るため、水分摂取がうまくできません。介護施設などに入居していればヘルパーさんがケアしてくれますが、高齢者だけだと気がついた時には手遅れ…となってしまうのです。

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