渋沢栄一の子孫が語る、バフェットが日本の商社株が儲かると判断したワケ

 

一方、PBRが1.0以上ということは、企業の現状の純資産よりも高い価値を見込んでいる、つまり、その企業には非財務的な価値(=未来の価値創造の可能性)が存在していると市場が判断しているということになります。

ただPBRが1.0以下の場合では、市場がかなり厳しい判断を下しています。企業の現状の純資産が将来は棄損する、言い換えれば非財務的な価値がマイナスであるということです。

バフェットさんが投資した大手総合商社は伊藤忠を除くと、全てのPBRが1.0割れ(0.70~0.85)です。強いていえば、これらの会社の人材はマイナス価値を生んでいるという極めてシビアな判断になります。「市場は常に正しい」ということわざもあります。

「そんなことはあり得ない!」という反論が多いでしょう。私もそう思いますし、バフェットさんも同じようなお考えがあるのでしょう。正確にいえば、「長期的には市場は常に正しい」ということだと思います。

ただ、ほとんどの場合、長期的という期間に耐えられない投資家が多いです。もし企業側が自社の非財務的な価値や人材価値がマイナスではないという確信があるのであれば、市場の短期的な判断を是正するために、非財務的な価値の可視化に真摯に努めるべきだと思います。

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実は企業の非財務的な価値である「社会的インパクト」を会計制度で表現するImpact Weight Accountという研究が米ハーバード大学で始まっています。

本研究のアドバイザリーボードのチェアであるロナルド・コーエンさんは、今では当たり前の会計制度の常識とは、1929年に起こった米国株式市場の大暴落が招いた恐慌時代という大ショックを経て、企業の透明性を高める意識から始まっていると指摘されています。そして、当時の企業は「そんなことは無理」と拒否したようです。

現在、大暴落は起こっておらず、むしろ逆です。ただ、新型コロナ・ウイルスは世界中に大きな社会的な、経済的な大ショックをもたらしていることは間違いありません。これからの経済社会の行方はわからない。そして社会が地域的にも所得的にも分断されている世の中に陥っているからこそ、企業の社会的インパクトへ関心が高まることも自然な流れです。

本会計研究のリーダーであるジョージ・セラファイム教授が登場するポッドキャストなどを視聴すると、特にご関心があるインパクトは温暖化・脱炭素のようです。比較的に測りやすいインパクトであるという事情もあるのかもしれませんが、温暖化という計り知れない地球規模問題のみならず、炭素税の導入などが企業のリアルなリスク要因になっているとして、欧米の経営者が活発に議論していることに興味を覚えました。

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