渋沢栄一の子孫が語る、バフェットが日本の商社株が儲かると判断したワケ

 

一方、日本では、これほど猛暑や悪天候に悩まされる日常生活があるというのに、温暖化・脱炭素をリアルな経営リスクと考える危機意識がまだ比較的希薄であると感じます。温暖化は世代間論争であると切り捨てる声も聞こえてくるほどです。

確かにTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)には多くの日本企業が署名し、賛同機関数は2020年7月末において290社で世界一です。(他は英国210、米国193、オーストラリア71、等。)ただ、大手総合商社のCO2排出量を売上対比、利益対比などで比べてみようと試みても、開示対象の定義や形式が統一されておらず、専門家でなければお手上げです。

非財務的な価値が会計制度に反映されるようになる世の中は割安に放置されている日本企業にとって吉となるか、凶となるか。「知らないところでルールが決まっている」とぼやくだけではなく、今から積極的に世界のルールメイクに首を突っ込んで頂きたいところです。

□ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
『論語と算盤』経営塾オンライン

『論語講義』泰伯第八 18

子曰く、巍巍乎たり、舜・禹の天下を有つや、而して与からず
けだし舜・禹いかに才智優秀なるも、
人は万能にあらざるを以って、
独力以って天下を如何ともし難し。
衆賢を挙げ衆智を集め、適材を定所に配置して、
おのおのその才能を十分に発揮せしめたるがために、
天下がよく治まったのである。

いくら才能があっても、ひとりだけでは何もできません。日本企業が万年割安状態からの是正には1社1社の努力はもちろんのこと、世界における評価の基準づくりを国家戦略として考えて実施することも必要ではないでしょうか。

『渋沢栄一 訓言集』実業と経済
企業家において、まず第一に心すべきは、数の概念である。
最も綿密に成算し、右から見ても左から見ても、
間違いがないようでなければならない。

バフェットさんが割安な日本企業に投資したのは、日本企業が会計制度をしっかり遵守しているという点に信頼性があるからではないかとも言われています。一方、非財務的価値は一般的には数値化が大変難しいです。

でも、難しいからと言って拒否感を示すのではなく、インパクト評価の見せ方に色々と試行錯誤や工夫を繰り返すことも心すべきでしょう。特に日本企業の制度遵守に対する信頼性が世界から高いのであれば。

謹白

image by: Shutterstock.com

渋澤 健(しぶさわ・けん)

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