菅義偉新首相と検察が裏取引?「安倍夫妻は不問に」談合政権の行く末は

 

どうにもタイミングが難しい総選挙

そうは言っても、今の衆議院議員の任期は21年10月21日までなので、いずれにせよそれまでには総選挙を行わなければならない。菅氏としては、21年9月までの自分の任期中に解散を打って勝って、1年後に再選を果たして長期政権を目指したいのは当然である。しかし、日程的にはなかなか難しく、解散を打てないまま9月総裁選を迎えて他の誰かに席を譲ることになる公算もかなり大きい。

いまマスコミが取り沙汰している10月中もしくは11月初旬にかけてのいわゆる「早期解散・総選挙」は、その時期がまさにコロナ禍の現在の第2波が抑え込めるかどうかの瀬戸際で、国民の苦しみと、それが収まらないのではないか、再拡大するのではないかという不安とが、おそらく最高潮に達しているという最中に、お遊びに等しい約1カ月間の政治空白を作り出すことができるのか、ということになる。

もう1つの要素として、10月はかねてIOCが東京五輪を来夏に開催するか中止するかの判断を下す期限と設定していて、これまたもう1つの瀬戸際である。JOCはじめ日本側は、その決断期限を1月くらいまで延ばしてくれるよう裏から働きかけているようだが、参加予定の選手やチームにとっては、他の競技大会の日程と折り合いをつけながらコンディションを整えていくにはこの10月がギリギリだとも言われていて、決断の先延ばしが可能かどうかは分からない。そういう微妙な時に首相以下の政治家が選挙に夢中になっているのはどういうわけかということになるだろう。

来年前半もほとんどチャンスはない

その先、年末・年始になると、コロナ禍が少し収まってくる可能性はないとは言えないが、逆に秋から冬にかけてインフルエンザの流行と重なってくる危険があるし、何よりもいよいよ持ち堪えられなくなった企業や店の倒産・廃業や失業がどんどん増え出すのがこの頃で、政府も自治体も経済破滅を食い止めることに全力を注がなければならないだろう。7月は都議選があり、これを重視する公明党はその前、春の総選挙は絶対に認めない。そして、やるかやらないか五輪……。となるともう9月が来てしまって、限りなく任期満了に近い「追い込まれ総選挙」ということにならざるを得ない。

その直前の自民党総裁選は、今度こそ派閥ボスの談合でなく地方党員の投票も含めた本格的なやり方で行わなければならない。その時に、どう考えても何もいいことはなさそうなこの1年間を終えて菅氏の人気が上昇していれば彼の再選ということになるが、それは相当難しく、むしろ「菅では総選挙は戦えない」という党内世論となって菅氏は去っていくことになる公算大である。

「暗い」「冷たい」という印象がまつわりつく菅氏

一国の指導者は「華がある」のがいいに決まっているが、菅氏はその正反対で「暗さ」「冷たさ」しか感じられないのが不幸である。それは表情や物の言い方という外面的なことだけではなくて、彼の心情のもっと深いところに根差しているのではないか。

例えば、ずっと前から岸田文雄政調会長に事実上の禅譲をするつもりであったはずの安倍首相が、この5月あたりから菅氏にシフトしたのは何故なのか。マスコミに行き渡っている解説は、「しばらく前からどうも頼りないなあと思っていたところ、岸田がまとめた『特定世帯に30万円給付』方針が二階と公明党の連携プレーで『一律1人10万円』に引っくり返されてしまって、存在感を失った」というものだが、そんな生やさしい話ではない。

消息通によると、安倍首相が菅氏に傾き始めたのは、それ以前のモリカケやサクラなどの疑惑を抑え込むのに貢献したのみならず、河井克行・案里夫妻の巨額買収事件、秋元司衆議院議員のカジノ汚職・証人買収事件が安倍首相及び昭恵夫人に波及することを菅氏が体を張って阻んだことへの感謝の念からのことである。

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