「情報弱者」は置き去りか。菅新内閣「デジタル庁」は懸念だらけ

 

菅義偉内閣で創設される「デジタル庁」なるものが、デジタルによる新しいコミュニケーション形態を念頭にし、国民の、国民による、国民のための新しいデジタルコミュニケーションを志向するならば大歓迎である。しかしながら、国民のために、は「情報弱者」にも目を向けているかに注目したい。

国民や弱者など人に焦点を当てるどころか、拙速に最先端のデバイスに引っ張られる政策となることだけは避けてほしい。私の周辺にいる支援が必要な方、最近では高齢者も含め、デジタル社会から取り残され、厭世観を募らせてしまう人は巷間に溢れている。

どんな人も他者から自己を承認してもらうことで、生きがいや働きがいが成立するから、相互理解の上に立つコミュニケーションとのセットでデジタル社会を描いていくのが前提だ。これは産業活動と教育、福祉も交えた議論になることが必然である。

デジタルの産業と社会を福祉領域も含みつつ描く社会は共助の領域の中で社会形成を考え主導するのが政治の役割であろう。デジタル時計は秒数が60個刻まれ、1つの数字が分数に足される仕組みで、現在表示されている数字が「今」である。一方のアナログ時計は円周を指し示す短い針と長い針の組み合わせで今を示す。それは額面の形である。数字という記号と形という表象の2つにこの国を分断してはいけないと思う。

数字を読めなければ、時間は分からない。そのような人は多く存在する。しかし、数字を読むことはできないが、時計の針で何を意味するかを理解する人は多くいる。この実態を知ってほしい。この現場を知れば、デジタル庁は、その役割の中でデジタルにおけるメディアリテラシーにも注目すべきだと気づくはずで、その切り口こそが情報弱者を生まないイノベーションにつながってくるのだと私は信じている。

image by: 平井卓也公式Facebook

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