トランプは負け戦。米国の国連無視を嘲笑う中国のワクチン外交とは?

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米中対立や新型コロナウイルスの流行など、問題山積の中で迎えた「国連総会首脳ウィーク」。これは、米ニューヨークで各国首脳が課題を話し合うもので、今回は国連創設75年の節目の会合となります。コロナの影響で、紛争や問題解決の糸口になりうる国連総会期間中の各国リーダー同士の直接対話が不可能となってしまいましたが、今後の世界情勢はどのように展開するのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、異例とも言える総会首脳ウィークに浮き彫りとなったさまざまな対立や問題を取り上げ解説するとともに、それらの今後についても考察。さらに菅新総理に求められる外交姿勢を提示しています。

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異例の国連総会首脳ウィーク:世界はどこに導かれていくのか?

今年も恒例のこの季節になりました。そう国連総会首脳ウィークです。総会自体は長く続くのですが、首脳が登場して、一般討論演説を行う第1週目は、特に【直近の国際情勢を占う】“何か”が明らかになる可能性があることから、非常に注目を浴びます。

私も国連にいたころは、紛争調停官という特殊な立場にありましたが、この国連総会ウィークと、大体その“うしろ”で裏番組的に開催される、首脳が出席する安全保障理事会会合があることから、準備と対応に追われる時期でした。

しかし、今年の総会首脳ウィークは普段とは違い、コロナ禍の影響から、一般討論演説はオンラインで提供されるという異例の事態になりました。国連創立第75周年という記念すべき年の総会だったのですが、このようなアレンジになり残念です。また、同じ“残念“ということであれば、先ほど述べたback-to-backで開催される(または並行して開催される)首脳レベルでの安保理会合も実現せず、無数の二国間首脳会合(注:表には出てこないが、多くの重要案件や紛争案件が、この非公式な首脳会合の連発で出口を見つける効果がある)もオンラインでは成立しないため、世界中で様々な紛争が勃発したり、紛争の種がまかれたり、新型コロナウイルス感染症に代表される世界的に一致団結した取り組みが必要とされる中、それらの方向性をリーダーレベルで定める外交的な機会を失ったことは、国際情勢を占う上で、非常に残念ですし、懸念を深める事態です。まさにニューノーマルの下、どのような外交が成立するのかというテストケースともいえるかと思います。

そんな異例の総会首脳ウィークも、しっかりと現在進行形の諸々の対立・国際問題が浮き彫りになりました。

一つ目が、国連を舞台にした米中対立激化の構図です。

トランプ大統領が行った一般討論演説では、対中国批判の内容が約6分にわたって行われ、加えてイランの脅威の強調と核合意の危険性を誇張し、自らが仲介を行ったイスラエルとUAE・バーレーンとの国交正常化というディールを宣伝、最後には、世界各国に対して「自国中心主義のすすめ」まで行いました。すべては、残念ながら国際情勢というよりは、彼の大統領選挙に向けたアピールであると言えますが、最後に「自国中心主義のすすめ」を国際協調の舞台であるはずの国連で持ち出すことで、国連に背を向ける姿勢を鮮明化したと言えます。

加えて、国連の一般討論演説ではタブーとされてきた“特定国を名指しにした批判”を飄々と行ったのも、アメリカ合衆国の国連離れをイメージ付けたと言えるでしょう。この流れは、仮に11月、バイデン氏が大統領に選出されても、なかなか修正できない大きく強い波ではないかと推測します。

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