悪化する日本の潜在成長率。私たちは「デジタル化」で復活できるか?

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人口減少が続き、生産年齢人口はそれ以上に減り続ける日本社会。人手不足を外国人労働者受け入れ拡大により補おうと打った手も、コロナ禍により空回り。ジリ貧の日本経済を表すように「潜在成長率」はさらに悪化すると見られています。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは今回、読売新聞が「潜在成長率」についてどのように報じて来たかを検証。菅政権の方向性と一致する「デジタル化」に望みありとする主張に対し、安倍政権時代から課題と認識されながら進まなかったことが実現できるのかと疑問を呈しています。

日本の「潜在成長率」を読売新聞はどう報じてきたか?

きょうは《読売》の番です。9面の解説記事は「コロナ下の日本経済」がテーマ。キーワードとしては「潜在成長率」が有力なので、検索を掛けてみました。読売オンラインの「記事検索」(1年分の紙面掲載記事が対象)では20件、「サイト内検索」(サイトに公開中の全記事が対象)では25件ヒットしました。後者の25件を対象にします。

まずは、9面解説の見出しから。担当は倉貫浩一編集委員。

コロナ下の日本経済 潜在成長率上昇 道半ば 労働力減■設備投資も鈍化 デジタル庁 生産性向上へ期待

バブル崩壊後、日本経済の本来の実力を示すといわれる「潜在成長率」の長期低迷が続いているという。その潜在成長率がコロナ禍によってさらに悪化する懸念があるという。

潜在成長率は潜在国内総生産の伸び率を指す。潜在国内総生産(潜在GDP)とは、「その国の労働力や生産設備などを有効活用した時に得られる、実力ベースの経済の体力を示す指標」とされる。80年代には年4%を越えていたが、2005年に1%を割り、その後は0%台。20年1~3月期は0.9%という。

潜在GDPの要素は3つ。「労働者数と労働時間」「生産に必要な設備などの量」「それらをいかに効率よく使ったかを示す生産性」の3つだ。

日本はG7の6位で、下に居るのはイタリアだけ。トップのアメリカは2%程度。専門家によれば「米国は移民の流入で若い労働力人口を維持できる。また世界中から優れた人材が集結し、転職の柔軟性があり、技術革新を生むダイナミズムに富み、生産性が高い」(小玉祐一・明治安田総合研究所フェロー・チーフエコノミスト)という。

日本の問題は、「労働力人口の減少」「国内市場の縮小による設備投資の鈍化」「情報技術活用の遅れで生産性が伸びないこと」が背景にある。

●uttiiの眼

ほとんど日本経済の凋落を決定づけるような話が続いた後、最後のブロックに登場するのが「デジタル庁」。潜在GDPを構成する要素のうち、労働力人口と設備投資はどうにも対処のしようがないとして、最後の望みである「生産性」の向上を、デジタル庁に担わせようということのようだ。

ちょっと荷が重すぎる気もするが、台湾のことを考えれば、可能性もなくはないのかもしれない。しかし、これまで「ITの導入に際して、組織の在り方や仕事のやり方、人材に大きな変更を加えてこなかった」ことが生産性の低迷につながっていたのだとすると、デジタル庁をつくっただけで、その条件を一変させることができるのか、大変心許ない。

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