ドコモ井伊新社長は「基地局共用」に前向き━━値下げを実現する「コスト削減」の秘策か
12月1日より、NTTドコモの社長に就任する井伊基之副社長。果たしてどのタイミングで料金値下げを仕掛けてくるのか、早くインタビュー取材をしたいものだが、気になったのが過去の発言だ。
昨年10月、NTTの副社長時代にNTT研究所のイベントに登壇。その模様が日経電子版の記事になっているのだが、井伊副社長が5G時代における「インフラ共用」に言及しているのだった。
● 日経電子版 2019/10/31「5Gは設備競争からインフラ共用へ」NTT副社長」
「これまでの携帯インフラは、それぞれの会社がより良い場所にアンテナを建てることがアドバンテージになっていた。設備とサービスが一体化した競争モデルだった」という。さらに「これからは各社でインフラ共用できる部分は進めていくことが目指すべき姿ではないか」としているのだ。
すでにNTTでは、国内で設備共用ビジネスを展開しているJTOWERに資本提携を実施。
JTOWERを中心に屋内外のインフラを共用を進め、同じエリアに各社が持つ鉄塔を統廃合していくアイデアを示したという。
これまで各キャリアは我先にと全国エリアを拡大し、繋がる場所、通信速度を競ってきた。
ただ、井伊副社長が、料金値下げに自信を見せるのは、こうした基地局整備の費用を大幅に削減するつもりだからなのかもしれない。
すでにJTOWERは国内4キャリアと付き合いがあり、主に商業ビルや病院、大学などの屋内向け施設で共用設備を持っているという。5G時代には、屋外に広げ、鉄塔とアンテナは共有しつつ、そこに各社が基地局設備を持ち込んで、みんなでエリアにしていくようだ。
例えば、楽天モバイルが積極的にインフラシェアリングを提案するとか、総務省が楽天モバイルをバックアップするために基地局共用を後押しするというのは理解できる。
しかし、そもそも「山でもつながるから」とNTTドコモを選んできた人も多いはずであり、このタイミングでNTTドコモのアドバンテージを自ら放り投げるというのは、相当な決断と言えるだろう。
「他社よりもつながる」という明確な差別化ポイントを犠牲にしてしまうことで、NTTドコモのユーザーが他社に流出する危険はないのか。
インフラ共有で、楽天モバイルとNTTドコモが同じエリアの広さになったとしたら、「楽天経済圏」というポイントサービスに力によって、NTTドコモから楽天モバイルにユーザーが流出することも考えられるだろう。
と、NTTドコモにとってインフラ共用はデメリットの方が多そうな気もするが、井伊副社長は本気でインフラ共用に舵を切るつもりなのか。
そのあたりも含めて、早くインタビュー取材がしたくてたまらないのだ。
image by: 総務省動画チャンネル(YouTube)