なぜ日本の女性は怒らない?安倍前首相「女性活躍詐欺」の動かぬ証拠

 

唯々諾々と付き従った経済界トップの腑抜け

この演説の直前に、米倉弘昌経団連会長、岡村正日本商工会議所会頭、長谷川閑史経済同友会代表幹事を官邸に呼びつけて、首相自ら、民間企業の役員・管理職に女性を増やせ、まず役員の1人は女性にしろと迫るという、念の入った演出まで繰り広げた。

首相から直接言われたのでは仕方がないということで、経団連は7月に企業行動委員会の下に「女性の活躍推進部会」を設置、翌14年4月には「女性活躍アクション・プラン」を公表した。それをバックアップすべく15年8月には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」も成立し、従業員301人以上の大企業や、国・地方自治体の採用者や管理職に占める女性の割合を各自が数値目標を立てて公表することを義務付けた。

数値目標を公表はするがそれを達成できなくても罰則・罰金がある訳ではないから、これはつまり経済界も政府と一緒になって「やってるフリ」に付き合えという法律にすぎなかった。なので、このようなひと騒ぎの後ではほとんど話題に上がることもなかった。

7年後に女性はどれだけ輝いたか?

ピョ~ンと飛んで7年後に「女性の活躍」はどこまで進んだかの数値を示そう。

第1に、大企業の役員における女性の割合だが、内閣府男女共同参画局HPが掲げている「上場企業の役員に占める女性の割合」のグラフ(図1)では、13年に1.8%であったものが18年には4.1%と2.3倍ほどに増えてはいるものの、30%という大目標には到底及ばない。

それどころか、安倍前首相が経済3団体代表に求めた「まずは役員の1人だけでも女性を」という控えめな目標さえ達成には程遠い。東京商工リサーチの20年8月11日の発表によると近年むしろ後退さえしている(図2)。「ゆっくりと女性の役員登用は進んでいるが、20年3月期決算の上場企業では女性役員比率は6.0%(前年同期4.9%)、まだ5割(1,152社)の上場企業で女性役員はゼロ」である。

第2に、管理職の範囲を「課長級から役員まで」に広げて統計を探すと、19年7月厚労省発表「平成30年度雇用均等基本調査」に「役職別女性管理職割合の推移」があり(図3)、その中の「課長相当職以上(役員を含む)」(但しこれは企業規模10人以上のほぼ全企業が対象)を見ると、13年度の9.1%から18年度の11.8%に微増はしているけれども、30%の大目標からすればほぼ横這いである。

公務員の中でも増やさないと

第3に、民間をその気にさせるためにも、まずは国家・地方公務員が率先、女性比率を増やさなければならない。そこで13年6月に官邸が「各省庁の重要ポストに女性を積極的に登用せよ」と指示。それを具体化して、直ちに厚労省内の事情を飛び越える形で事務次官に村木厚子社会・援護局長を充てることにした。その後、経産省の山田真貴子官房審議官を首相補佐官に、人事院の一宮なほみ人事官を人事院総裁にするなどの派手な演出を連発した。

しかし、それでどうなったかは定かならず、内閣府のHPには「女性の政策・方針決定過程への参画状況の推移」というなかなか面白い図があって(図4)、国家公務員として採用される人の中で女性の割合はわずかながらでも増えて、19年には35.4%と3分の1を超えるところまで来たけれども、この年の本省の課長・室長での女性割合は何と5.3%であるという過酷な現実が浮き彫りにされている。

地方公務員でも、このように女性が幹部になりにくい状況はほぼ同じである。

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