「メシハラの経済学」上司からの食事の誘い、行くか断るか人生で得するのは?

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上司から飲みに誘われたら、あなたはどうしますか?最近では誘いを断る部下も多いと言いますが、少し考えを巡らせた方が良いかもしれません。米国公認会計士でフリー・キャピタリストの午堂登紀雄さんは、自身のメルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』の中で、上司との食事にはメリットとデメリットがあると指摘。「メシハラ」かそうでないかを見極める必要があると解説します。

上司のメシハラ=飯ハラスメントにうんざりする若者たち

先日、「メシハラについてどう思いますか?」というご相談をいただきました。この「メシハラ」は、朝の情報番組から広まった比較的新しい概念。会社の上司など立場が上の人間が、気が進まない部下に対して強引に食事や飲みに行くことを迫る、といった行為を「飯ハラスメント」略して「メシハラ」と呼ぶようです。

部下に誘いを断られた上司が、「なんだよ、付き合いが悪いヤツ」と嫌味を言ったり、「いいからさっさと来い」と強制したり。また、部下が食事に付き合ったとしても「奢ってやってるんだから」「俺の酒が飲めないのか」など圧力をかけるのも「メシハラ」のひとつとのこと。

これはセクシュアルハラスメントにも似ていて、「好きな人からのタッチはうれしいけど、嫌いな人からのタッチはセクハラ」というようなもので、「好きな上司からの誘いはうれしいけど、嫌いな人からのそれはメシハラ」ということなのでしょう。つまりは相互の信頼関係の問題なのかな、と感じます。

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筆者としては「イヤなら断ればいいだけなのに、不満があれば何でもかんでも“○○ハラスメント”などと、満たされない自分の感情を正当化しようとする昨今の風潮はなんだかなあ」とも思うわけですが、それでは相談への回答にならないので、今回は私の個人的見解を踏まえて、部下からみた「上司との食事の損得勘定」を考えてみたいと思います。

さらに、余計なお世話かもしれませんが、部下を誘う側である上司の皆さんにもアドバイスをさせていただきます。

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上司との食事には「メリット」と「デメリット」がある

メシハラを主張する人は、上司に気を遣って疲れるし、就業後まで拘束されるのは自分の時間がもったいないと感じているようです。確かにその側面もありますが、反対に上司や先輩との酒食における「」の可能性について考察してみると、次のようなことが挙げられます。

  • 食事代・酒代が浮く(ワリカンではなく奢りの場合)
  • 上司の本音が聞け、今後の方向性や理不尽だと感じていた指示等への理解が深まる
  • 普段はなかなかできないプライベートの話や思想信条の話ができる
  • 社内では言いにくい会社の問題や業務上の課題が共有できる
  • お互いをよく知ることができ信頼関係や結束が強くなる
  • 社内の人間関係やパワーバランスを把握できる
  • 他の部門やあまり話したことがない同僚も同席するなら、社内人脈が広がる
  • 上司の過去の経験やノウハウを教えてもらえる
  • 会社の歴史の裏側を知ることができ、社風や体制等への理解が深まる
  • 悩みや不安などの相談に乗ってもらえる

ただし、ここには前提条件があります。「誘ってくれた上司が、上述したメリットを得られるに足る人物である」場合に限られるという点です。

たとえば、上司が持つ業務上のノウハウが得られるといっても、そこには「有能な上司であれば」という条件が付くでしょう。相談できるといっても、やはり「尊敬できる上司であれば」という条件が付くでしょう。

しかし、実際にはそうではない上司が少なくないからメシハラに感じるわけです。

仮に筆者が部下の立場なら、上司から食事に誘われたらついていくでしょう。そこで具体的にどう立ち回るか?ですが、「私がまだ未熟で半人前」という立場であれば、上司から酒食に誘われたら極力参加する方針です。

なぜなら、上司についてよく知ることは、自分の仕事のしやすさにつながるからです。上司自身も完ぺきではないですから、上司の性格や傾向を知ることで、「この人にはこういう接し方が良い」「この人にはマメな報告が良い」「この人には事前に着地点を共有した方が良い」などといった接し方、関わり方がわかってきます。

普段は叱ったり褒めたりすることが少ない上司であればなおさら、自分の業務のやり方に対する長所短所、改善点を知る良い機会です。 また、上司もさらにその上司からのプレッシャーを受けていますから、その影響も把握できるでしょう。上司はたいてい説教好きですから、謙虚に「はい、はい、わかりました、ありがとうございます」と素直に聞いていれば、いろいろ教えてくれます。

自分のキャリアプランを踏まえ、長期視点で判断する

私がなぜ「自分が未熟なら参加する」かというと、自分に転職の予定がないかぎり、その会社での職業人生は何十年も続く可能性もあるからです。

もしかしたら、その上司が持つ社内人脈がふとしたところで役に立つとか、その上司が昇進したり新しいプロジェクトに任命されたときに、引っ張ってくれる可能性もあります。

ならば週1回、もしくは月に1~2回ぐらい参加するのであれば、長い目で見ればメリットもあるというものでしょう。

ただし、パワハラ上司や無能上司、過去の自慢話に終始する武勇伝上司、同じ話を延々と繰り返す壊れたレコード上司など、明らかに時間の無駄と思える上司の場合は、この限りではありません。さすがに私も断りそうです(苦笑)。それに、そういう上司はいずれ淘汰されるでしょうし。

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とはいえ、世の中そんな有能で尊敬できる上司ばかりではないし、かといって、そこまでダメダメ上司でもないし、やはり誘いはなかなか断りづらいし、でも無意味な時間にはしたくない―― 次ページでは、そんな悩める部下の皆さんに「ストレスにならない上手な誘われ方」を提案してみたいと思います。

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