トランプよりもよほど危険。バイデン政権が中国と軍事衝突する日

 

ロシアとは全面的な対決に至る可能性も

欧州との関係ですが、こちらについては経済的な観点と環境対策の観点からは、概ね良好になり、協力体制を強めようとの動きが、トランプ政権からの反動という力も加わり、進むのだと考えます。パリ協定への復帰やWHO問題、そしてイラン核合意という視点から、アメリカがいち早く影響力を取り戻すには、欧州との連携を復活させるのが最も手っ取り早い策だからです。

しかし、最初に触れたCOVID-19の感染拡大への対策とアメリカ経済の回復という内政問題にしばらくは注力するものと思われることから、現在、大騒ぎし、期待がされているほど迅速に国際協調路線への復帰はなされないものと考えています。

そして欧州繋がりではNATOの負担問題がありますが、本件はトランプ政権下でクローズアップされたように見られていますが、実際にはオバマ政権下で対欧州への要請がスタートしており、その副大統領を務め、外交のフロントで力を発揮したバイデン氏ですから、安全保障問題において、欧州の安全に対して、もっと欧州各国からの貢献を求め、アメリカの“負担軽減”を進めるという方向性には変化はないと考えており、この考え方は、バイデン政権で大統領首席補佐官を務めるロン・クレイン氏もシェアしているとのことです。

今後、安全保障、経済的な連携、気候変動問題での協力、そしてイラン対策などで、多角的に欧米間の連携と協力を模索することになるでしょうが、各イシュー間の力のバランスの調整は、期待されている以上に、困難な課題だと見ています。

気になるのは、欧州各国や日本、カナダ、豪州などが相次いで【バイデン新政権】を念頭にした祝意と具体的な関係構築の模索を行っている半面、中国もロシアも、まだバイデン氏が新大統領になるという前提のコメントも外交活動も行っていません。

実際に北京やモスクワに尋ねてみると、“もちろん想定はして、策は練っている”とのことですが、習近平国家主席もプーチン大統領も、「トランプ氏大逆転という“リスクヘッジ”」を行っているとの見方もありますし、中国もロシアも、「バイデン氏のほうが、中ロに対して実は厳しい」との評価をしているとも聞いています。中国への対応と感情については先ほどお話しした通りですが、ロシアについては、大統領候補間での論戦で、「トランプはプーチン大統領の犬」とこき下ろしたり、息子のみならず自らも疑惑の渦中にいるウクライナ問題は、プーチン大統領が仕込んだもの!と非難したりしていることから、バイデン政権の対ロ政策は、恐らくトランプ政権の内容と圧力に比べて厳しいものになる可能性が高いと考えます。

実際に上院外交委員会のトップだった時期も、オバマ政権の副大統領時代も、一貫してバイデン氏はロシア嫌いです。先述のクレイン氏も認めていることですが、長きにわたる上院議員としての経験において、対ロ(対ソ)の見解は、伝えられている以上に、厳しく強固なものということです。恐らくカメラの前では、あのバイデンスマイルでプーチン大統領と握手しているかもしれませんが、プーチン大統領と持ちつ持たれつでうまく付き合っていたトランプ大統領とは違い、全面的な対決にも至るかもしれません。

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