トランプの政策に話を戻しますと、そもそも実際にトランプ政権が対日政策として取ってきたのは、例えば日本の自動車メーカーに対して米国内に工場を作れと強引に迫ったり、その自動車に関する通商交渉で強硬姿勢を取るなど、決して親日的ではなかったわけです。
例えば、安倍前総理がトランプ氏と個人的な信頼関係を維持してきたという問題があるわけです。そうした現象面だけ見れば、安倍ファンはトランプのファンになるのかもしれませんが、それはいくら何でも安倍前総理に失礼というものでしょう。
安倍前総理が、当選直後にトランプに会いに行ったり、ゴルフや会食を繰り返していたのは、何もトランプ政治に共感したからではありません。そうではなくて、トランプの対日姿勢に「危険なもの」を直感し、外務省や官邸がしっかり支える中でトランプ流の交渉術に負けないようにして国益を防衛するためだったわけです。そうしたことを考えると、日本でのトランプ応援団増加というのには困惑というか、めまいというか、とにかく頭がクラクラしてしまうのです。
反対に、日本におけるアンチ・トランプの言論も妙なものが多く見られます。例えば、トランプ氏の獲得票数の分、つまり7,200万のアメリカ人は人種差別的だという決めつけが見られるわけです。確かにトランプは、「取り残された白人層」の負け犬意識を意識下のマーケティングで拾ってきており、その手段として「排外」とか「人種差別」など禁じ手をガンガン使っているのは間違いありません。
ですが、トランプに投票した層はそれだけではないわけで、杓子定規なロックダウンをやっては地方経済が「死んでしまう」という危機感、財政規律より減税で経済を殺さないなど、あるいはトランプという「不真面目なキャラ」は嫌いだが、保守的なイデオロギーから冷めた支持をしている層など様々なのです。7,200万の人種差別主義者がいるという見方は、そうしたアメリカの保守票が持っている奥行きと多様性を無視した乱暴な議論であり、極めて残念です。
まして、アメリカの選挙制度について「日本と比較してズサンだから、トランプの言うように不正があるんだろう」という種類の議論は、事実誤認も甚だしいと思います。とにかく地上波などの情報番組でも、その手の言論が許されるのでは、FOXニュース以下と言わねばなりません。
アメリカの選挙については、各州ごとの公職選挙法によって執行されるので、全国でバラバラです。また住民票制度がなく、選挙人登録を各州ごとにやっているので、有権者の把握の制度はユルいです。それは事実です。ですが、選挙の場、例えば投票所や開票会場には「各陣営の代表、二大政党の各代表、行政当局の代表」が監視をするシステムになっています。
例えば「監視に来たのに入れてもらえなかった」ので「不正だ」とわめいている人が良くTVに出てきますが、あれはそうした監視人でも何でもない人ですから、入れないのが当然だし、そうした人が排除されたから不正があるというのは、フェイクニュースとして、ツイッターならウォーニングが出るレベルです。
バイデン政権が理想的な選択かというと、色々な問題点があるのは事実です。ですが、少なくともオバマ時代に戻って、日米安保とサプライチェーンの再起動をするというのは、100%日本の国益になるわけです。だからこそ、菅政権はサッサとバイデン当選を認めて祝意を述べたわけです。いずれにしても、日本におけるトランプ応援については、エンタメにもシャレにもならないと思うのですが、どうでしょうか?
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