CIA工作員や米外交官も被害。中国が印に使用「マイクロ波攻撃」の恐怖

 

実を言えば、この音で人に不快感を与えて攻撃意欲を失わせたり、行動不能にしたりする非致死性兵器は、米国でも既に試作されている。ウェーブバンド社は2003-04年、「群衆の行き過ぎを抑止する静かな音声信号」(頭字語はMEDUSA)を、米海軍のために試作した。同社は2005年、航空宇宙メーカーのシエラネバダ・コーポレーションに買収された。

2010年代の中国と日本における実験では、マイクロ波を照射されたラットが、一時的に迷路を学習できなくなったり、爆風による外傷性脳損傷(軽度なら脳震盪ともいう)のように病変したりした。

モスクワの米大使館は1975年から79年までマイクロ波の照射を受けた。米政府はソ連側の目的を、通信傍受を妨害すること、またはソ連が館内に設置した監視機器に信号を送ることだとみていた。

CIA秘密工作員だったマーク・ポリメロプロス氏は、ニューヨークタイムズの取材に対し、2017年12月にモスクワのホテルの自室で強いめまいに襲われ、帰国後も片頭痛で消耗し、退職せざるを得なくなったと述べている。

米国科学アカデミーは、キューバと中国におけるハバナ症候群の考えられる病因を検討し、今年8月、報告書を国務省に提出したが、同省は公開していない。国務省は、キューバにおけるハバナ症候群は直ちに調査し、大使館員に有給休職を認めたのが、中国については調査せず、罹患した公館員の有給休職もすぐには認めなかった。

元在中国公館員らによると、この隠蔽と格差の原因は、トランプ大統領が米キューバ国交回復に反対する一方、中国とは貿易交渉のため習近平国家主席の顔を立てており、ロシアとも関係改善を図っていたからだという。(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)

参考文献

Igarashi, Yutaka et al., “Pathophysiology of microwave-induced traumatic brain injury,” Biomed Rep. 2015;3(4):468-472. doi.org/10.3892%2Fbr.2015.454 (マイクロ波に誘発された外傷性脳損傷の病態生理学) 

Peng, Ruiyun et al., “Impairment of long-term potentiation induction is essential for the disruption of spatial memory after microwave exposure.” Int. J. Radiat. Biol. 2013;89(12):1100-1107. doi.org/10.3109/09553002.2013.817701 (長期増強の誘発の阻害はマイクロ波曝露後の空間記憶障害を起こすのに必須である) 

Swanson, Randel L. II et al., “Neurological Manifestations Among US Government Personnel Reporting Directional Audible and Sensory Phenomena in Havana, Cuba.” JAMA. 2018;319(11):1125-1133. doi:10.1001/jama.2018.1742 (キューバ・ハバナで聴覚的・感覚的な指向性現象を訴えた米政府職員の神経学的兆候) 

Verma, Ragini et al., “Neuroimaging Findings in US Government Personnel With Possible Exposure to Directional Phenomena in Havana, Cuba.” JAMA. 2019;322(4):336-347. doi:10.1001/jama.2019.9269 (キューバ・ハバナで指向性現象に曝露された可能性のある米政府職員の神経画像所見)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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