トランプ最後の大仕事か。台湾「国家承認」と「電撃訪台」の現実度

 

いま、台湾の一部で期待されているのが、「トランプ大統領の訪台と国家承認」です。これは、今年の10月12日に日本の夕刊フジのサイト「zakzak」で、「トランプ大統領の台湾への電撃訪問と国家承認宣言が検討されている」という記事が出たことが発端です。

これに対して、蕭美琴駐米代表(大使に相当)は、10月13日、メディアの取材に対し、「アメリカ政権関係者と話す中で報道にあるような話は聞いたことがない」と否定しました。

「トランプ氏訪台と国家承認検討」日本メディア報道、駐米代表は否定/台湾

しかし、その後のアメリカ大統領選挙でバイデン氏の勝利が確実視されていくなかで、トランプ大統領が台湾を訪問し、国家承認するのではないかという話が、日本の保守層や台湾の一部で、再び盛り上がりを見せているのです。

蔡英文総統は、11月5日、バイデン候補が優勢になっていることを受けて、自身のフェイスブックで台湾国民に対し「トランプ敗北でも冷静に」と呼びかけました。そして、「どちらが勝っても米台関係は揺るがない」と強調しました。逆に言えば、それだけトランプ勝利を期待していた台湾人が多かったということであり、バイデン勝利への動揺が大きいということでもあります。

台湾総統が米大統領選で異例の声明「トランプ敗北でも冷静に」

オバマ政権の8年間では、台湾への武器売却はわずか4回でしたが、トランプ政権は4年間で10回も売却しています。そして、政府高官の往来を促進する「台湾旅行法」や台湾の外交的孤立を防ぐための「台北法」などを相次いで成立させてきました。

「トランプ敗北」が台湾人を失望させた深刻な理由

トランプ大統領は、今回、バイデン氏に敗北して大統領の座を明け渡しても、4年後に再び大統領選挙へ出馬する意欲を示しているとも言われています。そうであれば、バイデン時代に後戻りできないほど、来年の1月20日の大統領就任式までに自身の政策を一気に進めたいと思っているはずです。

台湾としては、トランプ大統領が台湾を国家承認してくれることをもっとも期待しています。バイデン氏は息子が中国企業とカネでつながっている関係があるため、そこまでの期待はできません。むしろ米台関係はかなり後退せざるをえないでしょう。

台湾人の多くは、バイデン大統領の勝利に落胆していますが、ただし、人権問題やマイノリティ問題などにおいては、アメリカの民主党と台湾の民進党はかなり近いものがあります。

アジアで初めて同性婚を国として認めたのが台湾です。民進党は左派傾向の強い政党であり、アメリカ民主党とは政治的方向性ではある程度の親和性があります。

それでもバイデン氏よりトランプ大統領のほうが台湾にとって望ましいと考える台湾・民進党員が多いのも事実です。バイデン大統領になったとき、自由、民主、人権などで台湾を支持してくれるのかどうか不透明です。とはいえ、台湾を支持しなければ、民主党の政治的主張が嘘だったということにもなります。

アメリカでは、トランプおよび共和党=白人至上主義、民主党=黒人やマイノリティの味方のように見られています。

しかし、アメリカの保守層には、黒人の人種差別問題を煽っているのは民主党だという意見が根強くあります。キャンディス・オーウェンズという黒人女性は、「民主党は黒人の被害者意識を煽り、いつまでも黒人を『白人からの差別によって虐げられている人』に位置づけている。黒人が差別から脱していると一番困るのは民主党だ」と批判しています。

「被害者意識から抜け出して」米黒人女性が左派の支持者に呼びかけ

彼女が今年9月に出版した『Blackout: How Black America Can Make Its Second Escape from the Democrat Plantation』という書籍は、全米でベストセラーになりました。副題を日本語に訳すと、「アメリカ黒人は民主党の奴隷農場から再び逃れるためにどうすればいいか」ということになるでしょうか。

南北戦争以前、黒人の奴隷農場は民主党の地盤である南部に多く、一方、北部は共和党の地盤でした。このときが民主党による最初の「奴隷農場」であるとすれば、現在は2度目の「黒人奴隷農場」の状態だと、オーウェンズ氏は主張しているのです。

香港では周庭氏ら民主活動家が収監されました。これに対して、各国政府はまだ反応を見せていませんが、バイデン氏はどのようなコメントを出すのか、あるいは出さないのか。それによりバイデン政権の姿勢も見えてくると思います。

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