80カ国に達した中国包囲網。バイデン新政権が狙う反中統一戦線

 

中国、バイデン新政権初期に台湾を攻撃か

これらに加えて2021年6月から施行予定の改正特許法では、これまでの欧米諸国からの知財保護問題に答えるべく、特許侵害に対しての賠償額を他国に比べても高く設定し、また特許有効期間も20年に延ばす措置を取ることで中国でのビジネスをやりやすくするというイメージ戦略を打ち出し、海外からの投資をさらに伸ばすためのアピールをすることで【自由で開かれた中国】を示そうとしています。

香港国家安全維持法にかかる批判への痛烈な皮肉にも思えますが、実施され施行された場合は、欧米各国の対中包囲網の結束を綻ばせる効果があるかもしれません。

今後、バイデン新政権下でのアメリカと、習近平国家主席の中国との間ですさまじい綱引きの材料になりそうなのが、台湾問題です。

ウイグル自治区や香港での人権問題については、バイデン政権は妥協の余地はないでしょうが、対台湾の方針については未定です。トランプ政権下では、中国への当てつけもあり、台湾の厚遇が進んでいます。

例えば駐台湾の外交トップを大使級に格上げし、その人事は大統領直轄という方針が進行中ですし、上下院では、まだ新しい議会は始まっていませんが、台湾をアメリカがリードする多国間のサプライチェーンに組み入れるというアイデアも進行中で、中国に対して多方面からの揺さぶりをかけています。

しかし、バイデン政権は中国との諸々の関係に鑑みて、どこまで台湾との距離感を縮めるかは見えてきません。明らかに過度な台湾への肩入れは、中国政府を苛立たせ、関係修復のチャンスを逸し、逆に中ロを軸とした国家資本主義体制の拡大を招き、同時に資本主義国家グループの結束を壊すかもしれません。そう、かつてのオバマ政権下で欧州各国が中国へ傾倒していったように。

しかし、トランプ政権の4年間で米国内にできた流れは、議会上下院含め、中国への対抗軸とアメリカのアジア太平洋地域へのコミットメントのシンボルとして、台湾との距離を縮める方向に針が振れており、政権が変わってもなかなかそれを急転換するのは、経済的にも、安全保障体制的にも困難かと思われます。どのような方針を取り、どれぐらいの距離感で中台と付き合うのか、バイデン政権はとても難しいバランスを要求されることになります。

そして、それを間違えるか、中国に誤ったメッセージを与えることになった場合、中国(北京)による台湾攻撃が行われ、それがアメリカと日本を含む東アジア諸国を巻き込んだ紛争に発展するドミノ現象が起こるかもしれません(そうなった場合、喜ぶのは北朝鮮だけでしょうか)。とはいえ、中にはバイデン新政権初期に、その隙を突いて中国が、習近平国家主席の念願を叶えるべく、「アメリカは中国の主権を侵し、“内政干渉した”」とでも理由をつけて、台湾攻撃と統一を試みるかもしれません。

アジア各国もバイデン・シフトに沸くばかりではなく、このような恐怖のシナリオにも備えておく必要があるでしょう。

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