仁義なき自民内部抗争が勃発か。菅首相が自ら招いた「自滅の刃」

arata20201217
 

新型コロナ対策で大きく躓き、急速に国民の信頼を失いつつある菅政権。自民党内では早くも、「この首相では次の選挙は戦えない」という声が上がっているとも報じられています。党内実力者たちは今後、どのような動きを見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、久しぶりに自民党で始まりそうな権力争奪戦の行方を占っています。

頑迷なコロナ対策で菅政権自滅…党内抗争激化か

菅首相は迷路をさまよっているようだ。「GoToトラベル」は感染拡大に無関係と言いながら、結局のところ全国一斉、一時停止である。

今月28日から来年1月11日までで、もちろん効果が出るのは、そのまたずっと先。旅行関連業界と顧客は混乱のきわみにあり、対策の効果があらわれるまでの間、医療危機のさらなる深刻化は避けられない。

「GoToトラベル」は遅くとも半月前にストップしておくべきであった。そうすれば、もっと穏やかに年末年始を迎えられることだろう。

菅・二階の二頭政治は、早くも弱点をさらけ出した。論理矛盾があっても、二人が旗を振ってきた事業に対し、左遷人事恐怖症の官僚たちは何も言えない。

人の移動が増えれば、感染拡大しやすくなる。これは常識であろう。ところが、菅首相は「移動は感染と関係がない。分科会からも提言があった」と言い続けてきた。分科会の尾身会長が「ステージ3」相当地域では事業を中止すべきだと訴えた後も同様だった。

その考えが変わらないなら、「GoToトラベル」を全国一斉に、一時停止するというのは、つじつまが合わない。

そこで、一時停止を発表した12月14日のぶら下がり会見で、1人の記者が「GoToトラベルに感染拡大のエビデンスがないとの認識はあったか」とあらためて問いただした。菅首相はこう答えた。

「そこは、医師会の会長が申し上げているのではないでしょうか。それと、移動によっては感染を拡大しないという提言もあります。そこについては変わりません。ただ、専門家の委員の先生方から指摘をいただき、現実的に患者の方が出ていますから、年末年始、集中的に対応できるチャンスだと私は判断しました」

まったく支離滅裂というほかない。「GoTo」と感染拡大は関係ないと専門家が言っているが、専門家の指摘があるので、一時停止するというのだ。自身の思考停止を告白しているようなものではないか。

「GoToトラベル」と感染拡大の関係について中川俊男・日本医師会会長は「エビデンスがはっきりしないが、きっかけになったことは間違いない」と語っている。中川会長は「きっかけになった」に重点を置いてしゃべっているのだが、菅首相は「エビデンスがはっきりしない」の部分だけを都合よく利用し、トラベル推進の根拠にしてきた。それを今さら取り下げるのは沽券にかかわるとでも思うのだろうか。

いずれにせよ、こういうまやかしの理由によりズルズルと事業は続けられた。あげく、医療崩壊を心配する国民から匙を投げられ、内閣支持率はまたたくまに落下、あわてて政策を急転回したというお粗末だった。

薬効で元気を取り戻した安倍前首相はこんな局面を待っていたかもしれない。辞任前、菅官房長官にコロナ対策を任せていたのも忘却の彼方、「やっぱり俺でなきゃだめだろ」と、恥じらいもなく言えるチャンス到来だ。

だが、今ごろ地団駄踏んでいるだろう。「桜を見る会」前夜パーティーへの隠し支出で東京地検特捜部から近く事情聴取を受けそうなはめになって、事情は一変。国会でウソをつき通してきたツケがまわって、議員の資格も問われる始末。さすがに安倍再登板待望論も引っ込んだ。

コロナ対策の失政と、それによる内閣支持率の急落。いよいよ、菅政権の先行きは不透明になった。

政府が大株主として鎮座するNTTの完全子会社となったNTTドコモにケータイ値下げ競争の先頭を走らせるなど、国民の気を引く看板政策さえ、いまやかすんで見える。党内の人心は落ち着かない。たぶん「この人で大丈夫か」と疑念が膨らんでいることだろう。

来年9月の自民党総裁選を見据え主要派閥はどう動くのだろうか。

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