俺を誰だと思っている。菅首相がNHKキャスターに凄んだ「前科」

arata20201224
 

武田良太総務相の度重なる受信料値下げ要求等々、菅政権のNHKに対する「圧力」が目に余る状況となっています。その裏にはどのような思惑が潜んでいるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、菅首相が所信表明演説を行った夜に起きたある出来事とその後日譚を詳らかにしつつ、政権の「真の目的」を探っています。

受信料値下げ圧力を利用してNHKの報道に介入する菅首相

携帯料金と同じくNHKの受信料も、値下げに反対する人は誰もいないだろう。

公共の電波を割り当てる大元締めの武田良太総務相は、ことNHKに対して、すこぶる威勢がいい。

「NHKも考え直さなければならない点はたくさんある。余剰金の問題とか。コロナ禍において、家計の負担を減らす受信料の値下げから着手するのが公共放送としてのあるべき姿だ」(11月12日衆院総務委員会)。

頼もしい限りではないか。NHK改革に熱心だった高市早苗前総務相も本腰では踏み込めなかった受信料値下げを、菅首相の後ろ盾で果敢にやり遂げようという心意気とみえた。

それなら、この10月のような月100円足らずというのではなく、ドンと4割くらい値下げをと、期待したのだが、それもつかの間、武田総務相はこんなことを言い出した。12月17日、放送協議会運営委員会での講演。

「コロナを乗り切るまででも良い、自ら何かをやる気持ちがなければNHKは国民から厳しい審判を受ける」

この意味するところは、NHKはコロナが収束するまでの時限措置でもいいから受信料の引き下げを検討せよということらしい。

おやおや、早くもトーンダウンの気配。えらそうに言っても、とどのつまりは中途半端なところでおさめるつもりか。

いやまてよ。筆者の疑い虫が動き始めた。菅政権はどこまで本気で受信料値下げに取り組んでいるのだろうか。値下げ圧力の裏には、何か他の目的があるのではないか。

NHKが問題の多い組織であることは確かだ。たとえば、まるで税金のように国民から受信料を徴収して年間7,300億円を稼ぎ、利益は220億円、余剰金たるや3,700億円もあるというのに、他国と比較して高額な受信料にしがみつく。

しかも、「親方日の丸」の特権経営を許されていながら、子会社、関連会社、公益法人を多数擁するコングロマリットを形成。恒常的に下請け仕事をもらう配下の番組制作会社、出版社、ビデオ販売会社などが、巨利を積み上げている。

その強欲体質を問題視するのは当然のことだが、安倍政権以来の会長人事、経営委員会メンバーの人選をみていると、素直に、国民のためのNHK改革を進めようとしているとは、とても思えない。NHK改革に名を借り、高い受信料、多すぎるチャンネル数、儲けすぎ…洗い出せばきりがない改革課題をつきつけて締め上げることによって、言論を統制していこうとする意思が垣間見えるのである。

言うまでもなく、NHKは政府の広報宣伝機関ではない。国民から受信料を徴収し、市民社会の「公共」を守るために存在する。求められる「公平・中立」とは、あらゆる党派・主義に偏らないとともに、政府にも隷属しないということである。戦前のように国家権力が暴走することのないよう、市民の側から監視する。それこそが放送法に謳う「自律の保障」であろう。

それをいっさい理解しようとせず、政権のいいなりになるよう圧力をかけ続けてきたのが、安倍政権であったし、その中心にいて、恫喝まがいなやり方でマスコミの政府批判を封じ込めてきたのが、現首相、菅義偉氏である。

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